第14話 実技試験3


「ん?お前は誰だ?」


「受験番号1089番。雨宮裕太です」


「ん、そうか。では控室で待て。名前を呼ばれたらバトルルームへと入れ。分かったな?」


「はい」


控室に入った僕は、控室にできた列の最後尾に並ぶ。


控室には十名弱の生徒が待っていて、緊張した面持ちで一番奥の扉を見つめていた。


『グォオオオオオ…!!!』


「うわぁああああああ!?!?」


扉の奥からは、モンスターの鳴き声と悲鳴のような声が聞こえてくる。


おそらくあの先にあるのが、モンスターと一対一で戦うための個室『バトルルーム』だ。


受験生たちは一人ずつあそこへと入り、オーガと戦うことになる。


そして試験官が、受験生たちの探索者としての戦闘技術を採点していくのだろう。


『次。受験番号1085番。バトルルームへと入れ』


控室の中にアナウンスが流れた。


「お、俺の番か…行ってくる」


「頑張れよ」


「応援してるぞ」


「お、おう…!」


一人、また一人とバトルルームへと受験生が入っていく。


彼らが果たしてオーガとの戦いに勝ったのかはわからない。


控室にはモニターとかは特になかった。


そうして待っていると、いよいよ僕の出番がやってきた。


『次。受験番号1089番。バトルルームへと入れ』


「はい」


アナウンスの指示に従い、僕はバトルルームへと向かう。


自動的に扉が開いた。


僕は躊躇うことなくその先に一歩を踏み出す。

「まぁ、このぐらいの広さか」


バトルルームへとはいった僕は、周囲を見渡した。


そこは白一色の無機質な四角形の部屋だ。


部屋の片側にたくさんの武器が置かれている。


剣、盾、弓、斧。


さまざまな武器を選ぶことが可能なようだ。


『まずは武器を選べ』


バトルルームにアナウンスが響く。


僕は天井にあるスピーカーを見上げながらいった。


「いりません」


『…何?』


アナウンスが戸惑ったような声を出す。


僕はもう一度言った。


「いりません。武器は必要ありません」


『…そうか。なるほど』


アナウンスの声が唸った。


『では好きにしろ。間も無く試験用モンスターを投入する』


「いつでもどうぞ」


僕がいうのと同時、バトルルームの奥の扉が開いた。


そして…


『グォオオオオオオオ…!!!』


鎖に繋がれた生き生きとしたオーガが、バトルルームに姿を現した。


『最後にもう一度だけ確認だ。本当に武器は必要ないんだな?』


アナウンスが再度確認してくる。


「はい」


僕はオーガを見据えながら頷いた。


『…分かった。ルールは理解しているな?お前とは十分、そこのAランクモンスター、オーガと戦ってもらう。お前が戦っている間、我々がお前の戦闘技術を評価する。危ないと思ったら、職員が麻酔銃を放ち、戦闘を止めることになっている。だが、それで確実に命が助かるわけじゃない。毎年数名の死者もでる。お前がそうなるかもしれない。その覚悟はできているのか?』


「分かってます。前口上はいいので早く始めましょう」


『…っ』


あ、ちょっと怒った?


僕が天井のモニターを見上げる。


スピーカーから明らかに怒ってると思われる怒鳴り声が響いた。


『オーガを解き放て…!!』


『グォオオオオオオ…!!!』


次の瞬間、鎖の解かれたオーガが、僕の方に向かって突進してきた。

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