第13話 実技試験2
「なぁ、お前ランクは幾つだ?」
「お、俺…?なんのランクだよ?」
「決まってんだろ?ユニークスキルのランクだよ」
「なんでそんなこと聞きたいんだ?」
「こ、この試験で死なないか心配になってきてな…」
「なんだ?お前ユニークスキルランク低いのか?」
「び、Bなんだか…」
「それだったら大丈夫じゃね?受験生の平均ランクはBだっていうし…ちなみに俺もBだ」
スクリーンに流れている受験生と試験用モンスター、オーガとの戦いを見て不安を覚えたのだろうか。
近くの受験生たちが何やらそんな会話を始めた。
互いにユニークスキルのランクを確認し合って、胸を撫で下ろしている。
「俺もユニークスキルはBランクだ……だ、大丈夫だよな?俺たち死なないよな?」
「流石に大丈夫だろ…だって例年命を落とす受験生は、Cランクか、もしくはDランク以下のユニークスキル持ちがほとんどだっていうぜ?」
「そ、そうだよな…流石に俺たちは命を落とすことはないよな…」
どうやら受験生たちは、合否以前にこの実技試験で死なないかどうかを心配しているようだ。
そんなに怖いのなら受験しなければいいのにと僕は思ってしまったが、まぁ、彼らにも事情があるのだろう。
「な、なぁ…あんたはユニークスキルランク幾つなんだ?」
「ん?僕?」
聞き耳を立てていたら、まさかの話しかけられてしまった。
受験生数人が、まるで仲間を求めるように僕を見ている。
おそらくは自分と同じ、あるいは下のスキルランクの受験生を探して安心したいのだろう。
「はぁ…僕のランクは…」
この後の結果が目に見えるようだ。
そう思いながらも、僕は正直に自分のスキルランクを答えた。
「Gランクだ」
「は?」
「え?」
「ん?」
「お?」
一瞬受験生たちがぽかんとした。
数秒間、謎の沈黙が辺りを支配する。
やがて…
「ぶっ」
「あははははっ」
「じょ、冗談だろ!?ぶははははっ」
「おいおい、マジかよ!?」
受験生たちが腹を抱えて笑い出した。
「やれやれ…」
まぁ大方こうなるだろうと思っていた僕はため息を吐く。
受験生たちは目尻に涙を溜めながら、僕を指差して笑う。
「おいおい、聞いたかみんな!!」
「こいつのスキルランク、Gらしいぞ!?」
「命知らずだ!!とんだ命知らずがここにいるぞ!!」
「Gランクで探索者育成高校の実技試験を受けるとか正気かよ!?お前絶対死ぬじゃ
ん…!!やめとけよ…!!」
僕にランクを聞いてきた受験生たちが、大声でそんなことを叫ぶ。
「なんだ?」
「どうしたんだよ?」
その声につられて他の受験生たちも僕たちの元に集まってきた。
「何笑ってんだお前ら?」
「どうかしたのか?」
「ぶふふっ…おい、聞いてくれよ、こいつがな?こいつのユニークスキルランクがな!?」
最初に僕にスキルランクを聞いてきた連中が
、他の生徒に僕のランクを言いふらす。
その結果、僕は周囲の生徒数十名から嘲笑を受けることになる。
「おい聞いたか、あいつのスキルランク、Gらしいぞ?」
「マジかよ。Gランクとか聞いたことねぇよ。最低ランクのFよりさらにしたなのか?」
「あいつやばいんじゃね?Gランクがこの高校の実技試験なんて受けたら絶対に死ぬだろ…」
「なるほどな……毎年死者が出るのはああいう命知らずの馬鹿がいるからなのか…」
「なんか安心した。Bランクの俺が落ちることはあっても死ぬことはなさそうだ」
皆最も低いランクである僕を見下すことで、
優越感や安心感を得ているようだった。
「やれやれ…」
僕を馬鹿にする暇があるのなら、受験生とオーガとの戦いでも見て少しでも多くを学べばいいのに。
「おーい、お前まじで受験すんのかー?」
「やめとけって。絶対に死ぬぞ〜」
「自殺しにきたのかよー?」
「…」
何人かの受験生がニヤニヤしながら煽ってくるが僕は取り合わない。
彼らを無視してひたすら自分の受験番号が呼ばれるのを待った。
やがて…
『受験番号1089番……5番の控室に来るように…』
僕の受験番号が呼ばれた。
「ようやくか」
待ちくたびれた。
僕は5番の控室に向かって歩いていく。
「お、とうとうあいつの番か…」
「実物だな。GランクがAランクモンスターのオーガとどう戦うのか…」
「開始数秒でやられたりして…」
「プクク…ありえるぜ…」
「ありゃ一分ともたねぇよ!今年の死者第一号だな」
背後で受験生たちのそんな会話が聞こえたが、僕にとってはただの雑音だった。
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