第12話 実技試験


探索者育成高校の敷地内部にある受験会場の施設は、東京ドーム5個分はありそうな巨大な施設だった。


会場内にはたくさんの受験生が詰めかけており、皆が会場の上部に設置された巨大なスクリーンを見ていた。


『グァアアアアアアア!!!』


『グォオオオオオオオ!!!』


会場にはモンスターの鳴き声と、戦闘音が響いている。


スクリーンには今まさに、個室で実技試験を受けている受験生の様子が映し出されていた。


「今年はオーガか…」


「難化したって噂は本当だったんだな…」


「全国からの受験生の数が増えた結果だろうな……去年はオークだったらしいぞ…」


「クソ、オークだったら余裕で倒せたのに…今年はオーガかよ…運が悪い。一年早く生まれていれば…」


受験生たちのそんな会話が聞こえてくる。


僕は彼らと共に『個室に入れられオーガと戦うという実技試験』を今まさに受けている受験生の様子を観察する。


「あ、あいつやばくないか…!?」


「かなり押されてるな…」


「やっぱり強いな…Aランクのモンスターは…」


スクリーンに映し出された一人の受験生。


Aランクモンスターであるオーガと必死に戦っているが、徐々に劣勢になり、危うい空気が漂い出した。


他の受験生たちが固唾を飲んで見守る中、ついにその受験生にオーガから一撃が入り、体が吹っ飛んだ。


「ぐぁあああああ!?!?」


体が壁に叩きつけられ、悲鳴がここまで聞こえてくる。


「やべぇ!」


「死ぬぞ!!」


「きゃぁああああああ!!!」


他の受験生たちから悲鳴が上がる中、すぐにその個室に人が乱入してきてオーガに向けて麻酔銃を撃った。


『グォ…オオ…』


オーガはその動きを止める。


「ほっ…」


「よかった…」


「し、死んだかと思った…」


他の生徒たちがほっと胸を撫で下ろすなか、気絶した受験生が担架で運ばれていった。


『受験番号890番、〜〜君。すぐに7番の控室に来るように』


そしてすぐに次の受験生の名前が呼ばれる。


「なんだか俺怖くなってきた…」


「し、死にたくない…ここの受験、毎年死者も数人出るんだろ?」


「ああ。ユニークスキルのランクが低いのに受験する身の程知らずが毎年何人か死ぬらしい…」


「お、俺は大丈夫だと信じたい…」


実際に死の危険を伴う実技の受験に、生徒たちは恐怖し、怯えている。


彼らのいうようにこの探索者育成高校の実技の試験では、毎年死者が数名出ているのだ。


僕たち受験生は、この実技試験の受験の前に、もし受験最中に死ぬことになったとしても学校は一切責任を負わないという誓約書にサインさせられている。


探索者育成高校の受験は、実力のないものが受けるにはあまりに危険な代物なのだ。


「オーガか…みんなかなり苦戦しているな…」


毎年変わるらしい受験に使われるモンスターは、今年はAランクのオーガのようだった。


調べによると去年はBランクのオークだったため、試験が難化したということになるのだろう。


まぁ、僕にとって試験用モンスターがオーガだろうがオークだろうが関係ない。


数秒あれば倒せてしまうだろう。


「倒せば合格、ってことにはなりそうだな。これだと」


心配だったのは、試験に使われるモンスターを倒しても合格できない可能性だった。


試験用モンスターの討伐者が定人を超えると、後は戦闘技術などが評価対象になり、採点者によって基準が曖昧になってくる。


ゆえに、なるべく自分の戦闘技術を相手にわかりやすいように工夫して戦うやり方とかも考えてきたんだけど、このぶんだと出番はなさそうだ。


受験生たちは大方Aランクモンスターのオーガを倒せていない。


これならオーガを倒すだけで、受験合格は確実となるだろう。


『受験番号918番〜……3番の控室までくるように…』


実技試験はどんどん進み、たくさんの受験生が個室でオーガと戦って撃沈していく。


今の所死者は出ていない。


でもこの分だと、やはり今年も数人が命を落とすことになりそうだ。


僕はかなりギリギリの受験生たちとオーガの戦いを眺めながら、自分の名前が呼ばれるのを待つのだった。

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