第11話 受験生の平均スキルランクはBですよ
探索者育成高校。
それは政府が作った優秀な探索者を支援し、育てるための高校だ。
毎年、全国からたくさんの高ランクスキル持ちが受験生として集まる。
倍率は数十倍。
一部の本当に素質のある者以外は受からないと言われている。
もし難関の受験をクリアして探索者育成高校に入学できれば、学費は全て無料。
また三年間学校に通っている間、あらゆる出費を政府が負担してくれることになる。
教科書代、訓練用の装備代はもちろんのこと、娯楽に使う金も毎月数十万円単位で政府から支給される。
それくらいに、探索者育成高校に通う生徒たちには国も期待しているのだ。
「ここか」
今日はそんな探索者育成高校の受験日当日。
かなり時間に余裕を持って家を出た僕は、徒歩半時間ほどの道のりを経て、探索者育成高校へと到着していた。
「試験が実技重視っていうのもいいよね」
探索者育成高校の受験は、筆記と実技の二つがあるのだが、主に実技が重視される。
筆記試験の結果は、全体の得点の十分のいち程度しか反映されない。
つまり筆記がダメでも実技で好成績を叩き出せば、受かるということになる。
それほどまでに、探索者育成高校は、探索者としての『実力』を重視しているのだ。
…ちなみに筆記試験はすでに受験しており僕は自己採点でほぼ満点に近い点数をとった。
まぁ、僕の場合実技だけでも受かれたんだろうけど、探索者に関しての知識だって誰にも負けるつもりはない。
世界最強の探索者になる。
そのための努力は欠かして来なかったつもりだからだ。
「さて、まずは受付だね」
探索者育成高校の敷地内に入った僕は、まず受付へと向かった。
実技試験の流れはこうだ。
まず受付で自分の名前と受験番号を確認し、通過証をもらう。
その後、試験会場となっている施設へと入り、そこで実技試験を行う。
そのためにまずは受付で身分を確認して通過証をもらわなくてはならない。
「受験生の方はこちらにお並びくださーい」
「ん、こっちか」
僕は他の受験生たちと共に受付の列に並んだ。
受験生たちの表情は、緊張気味の者、真剣な者、余裕に満ち溢れている者とさまざまだ。
前に並んだ受験生が、どんどん通過証をもらって列から履けているのをぼんやりと眺めているとやがて僕の番がやってきた。
「名前と身分証の提示をお願いします」
「雨宮裕太。身分証はこれで」
僕は受付のお姉さんに自分の名前と身分証を提示する。
「雨宮裕太……ありました。ええと…スキルランクはG、年齢は十五……ってん?スキルランクG…?」
受付のお姉さんが訝しむように僕を見る。
「何か問題でも?」
「いえ、あなた本当に雨宮裕太さんなんですか?」
「はい、そうですけど」
「このスキルランクGというのはどういうことですか?」
「そのままの意味ですが?」
「いやいや、こんなのおかしいですよ。こんな受験生見たことがありません。Gって、最低ランクのFのさらに下のランクじゃないですか。こんな低いランクのユニークスキルなんて存在したんですね」
受付のお姉さんがどこか小馬鹿にするように僕を見た。
「おい聞いたかあいつ…」
「Gランクだってよ…」
「マジかよ…Gランクとか聞いたことないぞ…?」
周囲の受験生も僕を見てくすくすと笑う。
「悪いことは言わないので受験はやめておいた方がいいですよ?」
「どうしてですか?」
突然やめろなどと言われて僕が意味わからずに首を傾げると、受付のお姉さんが「はぁ」とため息をついた。
「いいですか。これは探索者育成高校の入学試験なんですよ?日本最高峰の探索者のための高校です。受験生の平均ユニークスキルランクはB。あなたじゃ足元にも及びません」「だからどうした?」
「だ、だからどうしたって……自分の立場分かってます?実技の受験には危険が伴うんですよ?死にたいんですか?」
「そんなことあんたには関係ないだろう?いくらランクが低かろうと僕には受験資格があるはずだ。受験料は払ったし、筆記試験も受けた。問題がないならさっさと通過証を発行してもらいたいんだが?」
「…っ」
受付のお姉さんが一瞬ギロっと僕を睨んだ
が、やがて馬鹿につける薬はないとばかりに首を振って、それから通過証を渡してきた。
「受験番号は1089番です……ご武運をお祈りします」
「ありがとう」
皮肉っぽい言い方でそんなことを言ったお姉さんに僕はにっこりと笑い返して、奥の受験会場へと向かったのだった。
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