第9話 いじめっ子たちに制裁を


「よお、裕太。遊びに来てやったぜ?」


「おい裕太?何逃げてんだ?」


「俺たちから逃げられると思うな?」


玄関を開けると、そこに並んでいたのはやっぱり僕をいじめたいじめっ子たちの顔だった。


はぁ、やっぱそうだよな。


僕は内心ため息を落としながら彼らと向かい合う。


「何かようかな?」


「おいおい、つれないな?せっかく友達が遊びに来てやったのによ?」


「ほら、裕太。行くぞ。俺たちと遊ぼうぜ?」


「へへへ。もちろんくるよな?こなかったら明日の学校でどうなるかわかってるよな?」


三人に囲まれて僕は従うしかない。


「わかったよ…遊ぶよ」


ここで断っても明日また学校でさらにいじめられるだけだ。


僕は渋々やってきたいじめっ子三人についていく。


三人は、僕を近くの広場まで連れてきた。


「何して、遊ぶの…?」


恐る恐る聞いた僕に、いじめっ子たちは答えた。


「野球に決まってんだろこのノロマ…!」


そう言った一人がいきなり気の棒で僕を殴った。


「痛い!?何するの!?」


「あ?野球しているだけだが?バッターは俺。ボールはお前な?ははははは!!」


「じゃあ俺はサッカーだぜ…!!」


「俺も…!」


三人は野球だサッカーだと言って僕を蹴ったり、棒で殴ったりしてくる。


「痛いよ…やめてよ…痛い……あれ?そうでもない?」


僕はいつものように疼く待て悲鳴をあげるが……少しして異変に気づく。


おかしい。


三人からリンチを食らっているのに、全然痛くない。


いつもだったら激痛であざとかができたりするのに。


これはもしかして『痛覚耐性』スキルのおかげ…?


いや、違う。


そもそも三人の攻撃が、ものすごく軽い気がする。


レベルアップの恩恵で、三人の攻撃なんて僕には通用しなくなっているんだ。


「ちょっとやめてよ」


「「「なっ!?」」」


うずくまっていた僕が突然立ち上がって、いじめっ子たちが驚愕する。


僕はそんな三人にいった。


「僕をいじめるのはやめろ。こんなのは遊びじゃない。こんなことを続けるのなら僕は帰る」


今まで言いたくても言えなかったことを、面と向かってはっきりという僕。


もう僕の中に彼らに対する恐怖はなかった。


僕はダンジョンにもぐり、何度も死にかけ……いや実際に死んで強くなった。


あのダンジョンのモンスターに比べたら、こんな三人怖くもなんともない。


「て、てめえ裕太…!」


「生意気いうじゃねぇか!!」


「お前は大人しく俺たちにいじめられてろよ…!」


僕に言い返されたのが気に食わなかったのか、三人が一斉に殴りかかってくる。


「よっと」


「「「なっ!?」」」


スキル『攻撃軌道予測』のおかげで彼らの攻撃を避けるのは簡単だった。


僕は最小限の動きで彼らの拳や蹴りを避ける。


すると三人がまたしても驚愕に目を見開いた。


「い、今何した…?」


「めっちゃ早く動かなかったか…?」


「み、見えなかった…」


どうやら三人には僕の動きが見えなかったようだ。


おそらくレベルアップによって敏捷が極端に上がっているため、三人は僕の動きを目視することすらできなかったのだろう。


…もうこんな奴らを恐れる必要はない。


これからは…ただ受け身になるだけじゃない。


やられたらきっちりやり返してやる…!


「もうやめて。これ以上僕をいじめるなら、僕は君たちに反撃するよ」 


「裕太のくせにぃいいい!!」


「生意気いうなぁあああ!!」


三人のうち二人が突っ込んでくる。


「遅いよ」


「ぐおっ!?」


「がふっ!?」


僕はスローモーションに見える彼らの背後に回って、その背中に蹴りを入れる。


二人は前のめりに吹っ飛んでそのまま地面に激突した。


「ぐぉおお…」


「い、いつの間に後ろに…」


手加減はした。


でもそれなりのダメージは入ったはずだ。


あの二人はしばらく動けないだろう。


「君はどうするの?」


僕は残ったいじめっ子一人に聞いた。


そいつは最初に野球だと言って棒で僕を殴ったやつだった。


「ちょ、調子に乗るなよGランクスキルが…!本物のスキルって奴を見せてやるよ…!!」


「へぇ?どんな?」


「お、俺の『剣技』スキルを喰らえ…!」


そういうとそいつは、手に持った気の棒を剣のように構え、振り回しながら僕に向かってきた。


「ふぅん。それが君のユニークスキルか」


なるほど。


確かに小学生にしては動きが洗礼されている気がする。


おそらくスキルの補助が動作に影響しているのだろう。


だけど…


「軌道が読めるし…何より遅すぎだよ」


「なっ!?」


僕はスキルによって予測された棒の軌道を見て、全てを避ける。


『攻撃軌道予測』のスキルがなくても、目視で十分に避けられただろうけど。


「うおおおおおお!!」


「無駄だよ。君の攻撃は僕には当たらない」


がむしゃらに棒を振り回すいじめっ子。


僕はその攻撃を、必要最小限の動きでひたすら交わした。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


やがていじめっ子は体力が尽きたのか、肩で息をしながら俺を睨んだ。


「な、なんで当たらないんだ……俺には『剣技』のユニークスキルがあるのに…」


「大して使えないスキルなんじゃないの?君に僕のスキルをバカにする資格はないよ」


「くそぉおおおお!!」


「そんなことよりも、僕、言ったよね?」


「え…?」


「これ以上やるなら反撃するって」


「あ…」


「もう攻撃は終わり?じゃあ僕のターンでいいよね?」


「や、やめ…」


「ふん!」


「ふごぉおおおお!?」


僕はいじめっ子に肉薄し、その腹に拳をお見舞いした。


「ぐぉおお…」


いじめっ子は腹を押さえてうずくまった。


…もちろん骨が折れないように手加減はした。


でもこれで僕の力を彼らは十分に理解したはずだ。


「もう僕に関わって来ないでね。それじゃあ」


僕は地面に蹲る三人を置いて、広場を後にした。




…その日から、僕をいじめるやつは一人もいなくなった。


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