第8話 帰還


ゴブリンウィザードとの勝負に勝った僕は、まず自分のステータスを確認した。


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名前:雨宮裕太

年齢:10

職業:小学生


レベル:18


攻撃:1500

体力:1600

敏捷:1200

防御:1650


ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』


スキル:『自動セーブ&ロード』『痛覚耐性』『隠密』『攻撃軌道予測』『狙撃』『火球』


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「だいぶレベルが上がったな…」


たくさんのゴブリン、そしてゴブリンウィザードを討伐したおかげで、僕のステータスは大幅に強化されていた。


各種パラメータの数字が、どれも四桁台に乗っている。


またゴブリンウィザードを倒したことで、新しくスキル『火球』を手に入れたようだ。


これはおそらくゴブリンウィザードが使ってきたあの炎の球を飛ばす魔法がスキル化したものだろう。


「今すぐに試したいけど…とりあえずここを脱出するのが優先だよね」


せっかく手に入れたスキルを試してみたいという気持ちもあるが、今はまずこのダンジョンを出たい。


僕はゴブリンウィザードの死体を踏み越えて、その先の光に向かって歩いていった。




「うわぁっ!?」


身体が浮遊感に包まれ、視界がブラックアウトした。


暗い海の中をもがくような感覚が全身を包み込み、その後、地面に足がついた感触があった。


僕は恐る恐る目を開ける。


「…!戻ってこれた…!」


気がつけば僕は、自分の部屋に一人で立っていた。


いつの間にか迷い込んだダンジョンから戻ってくることが出来たのだ。


僕は思わずガッツポーズをとる。


「夢、じゃないよね?」


しばらく帰還できたことを喜んだあと、僕は急に不安になって自分のステータスを確認した。


今までのが全部夢で、レベルアップも獲得したスキルも全て消えていたら流石に泣いてしまいそうだ。


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名前:雨宮裕太

年齢:10

職業:小学生


レベル:18


攻撃:1500

体力:1600

敏捷:1200

防御:1650


ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』


スキル:『自動セーブ&ロード』『痛覚耐性』『隠密』『攻撃軌道予測』『狙撃』『火球』


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「よかった…夢じゃなかったんだ…」


僕はホッと胸を撫で下ろす。


ステータスが元に戻っていたらどうしようかと思ったが、そんなことはなかった。


やっぱりあのダンジョンは実在するんだ。


僕が迷い込んだあの場所は、確かに実際のダンジョンだったのだ。


「まだ、あるのかな…?」


僕は恐る恐る押入れを開く。


「何もない…」


だが、そこにはもう何もなかった。


あのダンジョンは一体なんだったのだろう?


部屋の中の一部がダンジョンに繋がっていた、なんて話は今まで聞いたことがない。


もしかして、まだ政府すらも発見できていない、『新しい形をとった』ダンジョンなのだろうか。


…わからない。


今の僕に唯一わかることは、あのダンジョンと僕のユニークスキル『迷宮発見』になんらかの関係があることだ。


これは予想だけど、僕のユニークスキル『迷宮発見』はあんな感じの既存のダンジョンとは違った形で存在するダンジョンを発見する能力なんじゃないだろうか。


「検証が必要だよね」


僕のユニークスキルに関しては今後、その能力を調べることが必要だろう。


今は自分のユニークスキルが、なんの役にも立たないゴミじゃないことがわかっただけでも御の字だ。


「もうこんな時間か…」


僕が見知らぬダンジョンに迷い込んでいるうちに、かなりの時間が経過していたようだ。


気がつけば日は傾いて、時刻は夕方になっている。


ドンドンドン…!!


「裕太!?いるの!?」


「お母さん…?」


突然部屋のドアが乱暴にノックされ、母親が姿を現した。


「ああ、裕太…!どこにいたの!?探したんだから…!」


母さんが僕に駆け寄ってきてぎゅっと抱きしめてくる。


「ごめんなさい、母さん。押入れの中に隠れてたんだ」


「そうだったのね…無事でよかった……はぁ、全く、一体どうしたの?お母さんを心配させないで?学校で何かあったの?」


「ううん、何もなかったよ。ただ、ちょっと授業が面倒くさくなって…」


いじめられていることをわざわざ母親に告げて心配させる必要もない。


そう考えた僕は母さんに嘘をついた。


母さんが呆れたようにため息をつく。


「そんな理由でサボっちゃいけません。明日はちゃんと学校に行くんですよ?」


「はい、わかりました」 


「よろしい。あと、お友達が遊びにきているわよ?」


「え、友達?」


「うん、三人くらい。裕太くんの友達ですって。玄関で待たせてあるわ。早くいってあげなさい」


「…はい」


現在の僕に友達なんていない。


ユニークスキルの噂が広まるまでは仲が良かった子も何人かいたが、僕がGランクスキルのユニークスキルを授かってからは、みんな僕に近寄らなくなった。


「もう遅いから、あんまり長く遊んじゃダメよ」


「…はい。母さん」


おそらくあいつらだ。


僕は重い足取りで玄関へと向かった。


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