第6話 狙撃スキル


ゴブリンアーチャーは腕力自体は普通のゴブリンと変わらなかった。


『グギャァアアアア!!』


「ぅぉおおお!!!」


ゴブリンアーチャーに馬乗りになった僕は、両腕を足で押さえて首しめ攻撃を行う。


ゴブリンアーチャーは必死に抵抗しようとしていたが、やがて白目を剥いて動かなくなった。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


僕はゴブリンアーチャーが完全に絶命したのを確認してから立ち上がり、荒くなった息を整える。


〜スキル『狙撃』を獲得しました〜


「…?また新しいスキルかな?」


頭の中でまたあの声が流れた。


新しいスキルや、何かステータスに重要な変化が起こったときに流れる声だ。


一体なんなんだろう?


他の探索者にもおんなじような声が聞こえるのだろうか。


「ステータスを確認しよう…」


何はともあれステータスだ。


僕は自分のステータスを確認する。



====================


名前:雨宮裕太

年齢:10

職業:小学生


レベル:10


攻撃:690

体力:750

敏捷:650

防御:700


ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』


スキル:『自動セーブ&ロード』『痛覚耐性』『隠密』『攻撃軌道予測』『狙撃』


====================


「おぉ…!す、すごい…!」


ゴブリンアーチャーを倒したことで俺のレベルは一気に二桁へと突入していた。


僕は思わず喜びの声をあげてしまう。


レベル二桁というのは、僕の探索者知識が正しければ、20歳になるまでに辿り着ければ御の字というレベルだったはずだ。


小学生にしてレベル二桁に到達するのは、かなり異例と言える。


「これってかなりすごいことなんじゃ……い、いや、だめだ。調子に乗っちゃ…」


一瞬またはしゃぎそうになるが、僕は慌ててブレーキを踏む。


喜ぶのはせめてこのダンジョンを脱出してからだ。


「あとは、スキル『狙撃』か……これはゴブリンアーチャーを倒したからだよね」


聞いたことがある。


何か特殊な攻撃手段を持ったモンスターを倒すと、そのモンスターの力がスキルとして手に入ると。


おそらくこの『狙撃』スキルは、ゴブリンアーチャーが持っていた力がスキル化したものなのだろう。


「これ……使ってみようかな」


僕はゴブリンアーチャーの弓と矢を拾い上げる。


『グゲゲ…!』


ちょうどそのタイミングで、洞窟の奥からゴブリンが現れた。


今度はどう見ても普通のゴブリンだ。


しかも一匹。


僕は絶好のタイミングで単体で現れてくれたそのゴブリンで、スキルを実験してみることにした。


「こう…かな…?」


弓なんて一回も使ったことないけど、僕は見よう見まねで弓を構え、矢を目一杯引いた。


「当たれ…!」


『グゲ…!』


そしてこちらに接近しつつあるゴブリンに向かって矢を放った。


シュッ!!!!

 

『グゲッ!?』


「当たった!!!」


僕のはなった弓矢は、吸い込まれるようにしてゴブリンの眉間に命中した。


頭を貫かれ、頭蓋を矢が貫通したゴブリンは、ゆらゆらと揺れてその後に地面に倒れた。


「すごい……スキルってすごい…!」


偶然、というわけではないのだろう。


初心者の僕の矢が、こんな離れたところから正確に当たるはずがない。


今のは明らかにスキルの力だ。


「使える…このスキル…!」


遠距離攻撃の手段を手に入れた。


これはとても大きなことだ。


接近しなくて済むのなら、危険を冒さずとも獲物を仕留められる。


「前に進んでいる気がする…行こう。出口がどこかにあるはずだ」


僕はゴブリンアーチャーから得た弓矢と共に、さらに洞窟の奥へと進んでく。

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