第5話 ゴブリンアーチャー
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名前:雨宮裕太
年齢:10
職業:小学生
レベル:7
攻撃:520
体力:580
敏捷:490
防御:500
ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』
スキル:『自動セーブ&ロード』『痛覚耐性』『隠密』
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「はぁ、はぁ、はぁ…なんとか三匹倒したぞ…!」
それから半時間後。
僕は、僕を一度殺した三匹のゴブリンを、各個撃破で全滅させることに成功していた。
ゴブリンは一匹ずつ倒した方がいい。
この教訓を僕はしっかりと胸に刻みながら、自分のステータスを確認する。
「かなりステータスが強化されたな……スキルも増えてる…」
合計四匹のゴブリンを倒したことで、僕のレベルは7まで上がっていた。
ステータスも大幅に強化され、スキルも増えた。
『隠密』スキルというらしい。
多分これは、ゴブリンが一匹になるまでひたすら暗闇の中に隠れて待っていたから獲得したスキルなのだろう。
「先に進もう…」
ステータスを確認し終えた僕は、歩みを再開させた。
レベルが上がったからといって油断はない。
ここはおそらくダンジョン。
どんなモンスターが出てくるかわからない。
それに今度死んだらまた『自動セーブ&ロード』のスキルが発動するとも限らない。
一日に一回だけ、っていう回数制限があるかもしれないし…
「ゆっくりだ…ゆっくり…」
僕は自分に言い聞かせながら、暗闇の中を進んでいく。
やがて…
『グゲゲ…!!』
前方に一匹のゴブリンを発見した。
「周りには仲間はいないな…?」
ゴブリンは一匹ずつ倒した方がいい。
僕は一度死んで体に染みたこの教訓を生かして、周りに仲間がいないかどうかを確認する。
大丈夫のようだ。
あいつは一匹。
だったら倒せる。
「よし…行くぞ…!」
僕は少しずつ一匹でいる前方のゴブリンに近づいていく。
スキル『隠密』のおかげなのか、かなりの距離近づいてもゴブリンがこちらの存在に気づくことはない。
「うわぁあああああ…!!」
もう十分近づいたと思われる距離で、僕は棒立ちのゴブリンに突進していく。
そのまま押し倒して首を絞めたら僕の勝ちだ。
そう思っていた時期が僕にもありました。
『グゲ』
「え…」
すっと、僕の存在を確認したそのゴブリンが、背中から弓と矢を取り出した。
「ご、ゴブリンアーチャー…」
『グゲ』
頭の中にそんなモンスター名が浮かんできた。
ゴブリンにも色々種類がある。
その中には矢を使ったり魔法を使ったりする亜種が存在する。
…どうやら僕はとんでもないミスを犯してしまったらしい。
『グゲ』
ゴブリンアーチャーが僕に向かって容赦なく弓を弾き矢を放った。
グサ…!
「が…!?」
矢は正確に僕の胸部を捉え、僕は膝をつく。
「う、うぅうう…」
痛み、はなぜか感じない。
多分スキル『痛覚耐性』のおかげだ。
だが、体がびくびくと痙攣して、いうことを聞かない。
「がふっ…」
口から血を吐いた。
息ができない。
頭がくらくらする。
目の前が段々と暗くなっていく。
『グゲ』
ゴブリンアーチャーが、無感情な瞳で僕を見据えながら2本目の矢を引いた。
「あ…」
これ、死んだ。
そう思った次の瞬間、放たれた矢が僕の眉間を捉えた。
〜スキル『攻撃軌道予測』を獲得しました〜
矢がこちらに届く瞬間、何か赤い線のようなものが視界に映った気がした。
「……っ!?はぁ、はぁ、はぁ…!?もしかしてまた…!?」
気がつくと僕は暗闇の中に一人で立っていた。
足元には一匹のゴブリンの死体。
一匹目に倒したゴブリンではない。
これは四匹目に倒したゴブリンだ。
「す、ステータスを確認しないと…」
混乱した時はステータスの確認。
僕は自分のステータスを確認してみる。
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名前:雨宮裕太
年齢:10
職業:小学生
レベル:7
攻撃:520
体力:580
敏捷:490
防御:500
ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』
スキル:『自動セーブ&ロード』『痛覚耐性』『隠密』『攻撃軌道予測』
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やっぱりだ。
時間が巻き戻っている。
僕が四匹目のゴブリンを倒したところまで。
「よかった…もう一回発動したんだな…」
僕はゴブリンアーチャーに殺された。
普通のゴブリンだと思って接近してしまったからだ。
もし『自動セーブ&ロード』のスキルが一日に一回しか使えない回数制限があったとしたら僕は一貫の終だった。
「スキルが増えてるな…」
新しく『攻撃軌道予測』というスキルが増えている。
どんなスキルなんだろう。
スキル名から大体その能力は予想できるけど
実際に使ってみるまではどんな能力なのかは実感できない。
「よし…行くぞ…今度は不用意に近づいたりなんかしない…」
僕は勇気を奮い立たせて、ゴブリンアーチャーがいるであろう洞窟の奥へと進んでいく。
さっきはあれだけ至近距離に接近してしまったからやられた。
ある程度距離があれば、矢を避けられるかもしれない。
一発目を避けたら、一気に接近する。
そして接近戦に持ち込む。
これは昔本で学んだ、遠距離攻撃をしてくるモンスターに対する定石だった。
『グゲ』
「いたな…」
進んでいくと、やはりそこにはゴブリンアーチャがいた。
「ふぅ…大丈夫…僕にならできる…」
僕は深呼吸を繰り返し、そう自分に言い聞かせてから、一気に飛び出していった。
「こ、来い…!ゴブリンアーチャー!!」
『グゲ』
僕はかなり距離の離れたところで大声を出して、無理やりゴブリンアーチャーに僕の存在を気づかせた。
『グゲ』
ゴブリンアーチャーが僕の姿を見て、矢を構える。
「え…何これ…」
飛んできた矢を避けようと僕が姿勢を低くしていると、空中に赤い線のようなものが見えた。
ゴブリンアーチャーのところから、僕の右肩口のところへと伸びている。
「まさかこれは…」
『グゲ』
「…うわっ!?」
ゴブリンアーチャーの矢が放たれた。
僕はがむしゃらに前に向かって転がった。
先ほど僕の右肩口があった部分……つまり赤いラインが走っていた場所を矢が通過していった。
「やっぱりそうか…!」
さっきの赤いラインはゴブリンアーチャーの矢の軌道だったんだ。
多分これはスキル『攻撃軌道予測』の力のおかげだ。
『攻撃軌道予測』は、事前に攻撃の軌道を赤い線で知らせてくれるスキルだったんだ。
『グゲ』
「って、そんなこと考えてる場合じゃない!?」
ゴブリンアーチャーは一撃目の矢を避けられて少し驚いたように表情を変えながらも、2本目の矢を放つ準備をしていた。
僕は慌ててゴブリンアーチャーに接近する。
「うわぁあああ!!!」
『グゲ!?』
矢が上手く機能しない距離まで近づく。
ゴブリンアーチャーは距離を取ろうとする。
だけど逃さない。
僕はステータス上昇によって強化された脚力で、ゴブリンアーチャーに追いつく。
「捕まえた…!」
『グゲェエエエエエエエ!?』
そして馬乗りになり、これまでのゴブリンにしてきたように首絞め攻撃を喰らわせてやった。
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