第3話 僕だけの異空間ダンジョン
〜異空間ダンジョンの中に入りました〜
〜おめでとうございます〜
〜あなたは初の異空間ダンジョンの発見者になりました〜
〜報酬として『自動セーブ&ロード』スキルが付与されます〜
〜あなただけの迷宮探索をお楽しみください〜
「痛てて…」
押入れの向こうの暗闇に吸い込まれた僕は、どこか知らない場所へと落とされた。
暗い。
真っ暗で何も見えない。
地面はひんやりとして冷たい。
「何なんだよ…」
頭の中でさっきからわけのわからない声が連続で聞こえている。
「うぅ…ここどこ…?」
僕は立ち上がって周囲を見渡す。
そこは暗い洞窟のような空間だった。
一方通行で、前後に道が続いている。
「何なんだよもう…今日は散々だ…」
泣きたくなってきた。
だが、もう散々いじめられて泣いたため、涙すら出てこない。
僕は怖いのを我慢して、半ばヤケクソになって前方へと進んでいった。
「お母さん!?どこー!?」
暗闇の中、母親を呼んでみる。
だが、答えはなかった。
僕の声は洞窟に反響して奥まで響いていく。
「うぅ…怖い…暗い…帰りたい…」
僕はそんな呟きを漏らしながら、薄暗い中を前方に向かって進んでいった。
どこが出口なんだろう。
なんで僕はこんなところにいるんだろう。
『グゲゲ…!!』
「…っ!?」
不意に前方から声がした。
僕は驚いて飛び退いた。
『グギィ!』
前の方から一匹の影が僕の方に近づいてきた。
僕は近づいてきた『そいつ』を目の当たりにして思わず叫んでいた。
「ゴブリン!?嘘でしょ!?」
『グゲゲ…!』
暗闇の向こうから近づいてきたのは、緑色の小鬼、ゴブリンだった。
ゴブリン。
それはダンジョンに出現するモンスターの中で最弱格と言われいるモンスター。
その戦闘力は非常に低く、一匹なら子供でも倒せるほど。
何で僕がそんなこと知っているのかというと、僕は探索者に憧れていたからだ。
将来は、強いユニークスキルをもらって誰もが名前を知っているような探索者になる。
そんな夢を抱いて、モンスター図鑑などを買ってもらい、モンスターに関して色々と調べていた。
だからモンスターに関してかなり知識があるのだ。
…Gランクのユニークスキルを授かってしまった今、その知識は宝の持ち腐れかもしれないが。
『グゲゲ…!』
「何でここにモンスターが!?もしかしてここはダンジョンなの!?」
ゴブリンがゆっくりと近づいてくる。
僕は悲鳴のような声をあげて逃げる。
ゴブリンは嬉しそうにしながら追ってきた。
「うぅ…何でこんな!?押入れの奥がダンジョンだったってこと!?」
なぜここにゴブリンがいるのだろうか。
モンスターはダンジョンにしかいないはずだ。
ということはここはダンジョンの中なのだろうか。
意味がわからない。
ダンジョンの入り口には厳重に管理された扉があるって聞いたけど、僕はダンジョンに入った記憶すらない。
本当になんなんだこれ…
『グゲゲ…!』
「痛いっ!?」
ゴブリンに追いつかれ、後ろから殴られた。
僕は地面に転んでしまう。
『グゲゲ…!』
「うぅうう!!こうなったら…!!」
僕は襲いかかってくるゴブリンに必死に抵抗し、馬乗りになって首を絞める。
『グギィイイイイイ!?!?』
「うわぁああああああ!!!」
ゴブリンに腕を引っかかれるが、その力は弱い。
子供でも倒せるというのは本当のようだ。
僕はゴブリンに抵抗されても力を緩めず、ひたすら必死になって首を絞め続けた。
やがて…
『…』
「死んだ…?」
ゴブリンは動かなくなっていた。
〜ゴブリンの討伐を確認しました〜
〜レベルが1→3へ上昇しました〜
頭の中でまた声が流れる。
「レベルが上昇…?レベルアップってこと…?」
レベルはその人物の大まかな強さを表す指標で、モンスターを倒すことで上がっていく。
僕は恐る恐る自分のステータスを確認する。
====================
名前:雨宮裕太
年齢:10
職業:小学生
レベル:3
攻撃:180
体力:200
敏捷:170
防御:190
ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』
スキル:『自動セーブ&ロード』
====================
「な、何これ…」
自分のステータスにいろんな変化が起きていた。
まずレベルが上がっていた。
ずっと1だった僕のレベルは一気に二つ上がって3になっていた。
それに伴ってステータスの数字もかなり上がっている。
攻撃、体力、敏捷、防御の四項目全ての数字が三桁へと突入していた。
さらに…
「変なスキルが追加されてる…」
スキル『自動セーブ&ロード』。
なんだこれ。
いつの間に獲得したんだろう?
その能力はどんな感じなんだろう。
「で、でも…これって強くなったってことだよね…?」
わけがわからないことだらけだけど、少なくとも初めてのモンスター討伐、レベルアップ、ステータス強化を経験したことだけは僕にもわかる。
「な、なんかいける気がしてきた…」
幼い故の無鉄砲さというのだろうか。
僕は初めてのレベルアップの高揚感から、こんな状況もどうにかなるような気がしてきた。
「す、進もう…きっと出口があるはずだ…!」
先ほどのような絶望はもうない。
僕は希望と自信を抱いて、暗がりの奥へと進んでいった。
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