第2話 Gランクスキル


「やい裕太!!ゴミランクスキル!!」


「ぎゃははっ!!人生負け組のクズやろう!!」


「ほらっ!!なんとかいってみろよ底辺やろう…!!」


「やめてよ!!痛いよ!!やめてよぉ!!」


10歳の誕生日の日にスキルを授かってから一週間後。


僕は、小学校でいじめを受けていた。


その理由はもちろん僕が授かったユニークスキルのせいだ。


ユニークスキルにはランクがある。


Sランクが一番上で、A、B、C、D、E、Fの七段階に分かれている。


僕のスキルはそのさらに下のGランク。


今まで存在しなかった、Fランクのさらに下の史上初めてのゴミランクスキルだ。


「Gランクとか初めて聞いたぞ…!!」


「ははっ!!どんだけ弱いんだよお前のスキル…!!」


「ダンジョンを見つけるスキルとか何の役に立つんだ!?ああ!?」


「うぅ…痛いよ…苦しいよ…」


僕は同級生の男たちに囲まれ、暴力を振るわれる。


僕が史上初めてのGランクスキルを授かったことは瞬く間に小学校中に広まってしまった。


そしてそのせいで僕は、何の役にも立たないゴミとして誹りを受けて、いじめられることになってしまった。


「何でこんなことに……こんなスキルならない方がよかった…」


実際僕のユニークスキルは、ない方がよかったと思えるほどに弱いスキルだった。


ユニークスキル『迷宮発見』。


その能力は、迷宮……つまりダンジョンを発見するというもの。


僕がこのスキルを授かった瞬間思ったことは、「使えないにも程がある」だった。


なぜなら、ダンジョンなんて、すでに国が全て見つけてしまっているからだ。


現れた当初は人類の脅威として扱われていたダンジョンは今や、『魔石』をもたらす重要な『資源』だ。


各国政府は、自国領土にあるダンジョンを血眼になって探し、当然全てのダンジョンは程なくして発見されている。


ゆえに、ダンジョンを発見するためだけのユニークスキルなんていまさら必要ない。


僕の『迷宮発見』は、まごうことなきGランクスキルだ。


こんなのFランクにすら値しない。


「もうお前の人生は終わりだな…!!」


「ギャハハっ!!Gランクスキルとか、どうやって生きていくんだ!?」


「探索者になれないどころか、普通の生活すら送れないだろ!!もう自殺しろよ…!!」


「うわぁあああああああ!!!!」


同級生たちに容赦ない言葉を投げかけられ、僕はたまらなくなって駆け出した。


そのまま教室を飛び出し、学校からも逃げ出して家に向かう。


「うぅ…うぅううう…」


泣きながら帰路を歩き、自宅へと帰る。


「あれ!?裕太!?あんた学校は!?」


家に帰ると、掃除機をかけていた母親が帰ってきた俺に驚いて声をかけてくる。


「うわぁあああああ!!!」


「ちょっと裕太!?どうしたの!?何があったの!?」


心配そうに駆け寄ってくる母親を無視して、俺は二回の自室に篭る。


そしてユニークスキルを授かると同時に、みえるようになった自分のステータスを恨めしげに睨みつける。


====================


名前:雨宮裕太

年齢:10

職業:小学生


レベル:1


攻撃:80

体力:100

敏捷:70

防御:90


ユニークスキル:『迷宮発見:ランクGreat』


スキル:無し


====================


「何なんだよスキルランクGってぇ…うぅ…ひどいよ…」


改めて見るとひどいステータスだ。


僕はもともと周りの子よりも鈍臭くてステータスが低かった。


だからこそ10歳で授かるユニークスキルに賭けていたのに。


今やその望みも絶たれた。


僕は一生いじめられ、周囲から虐げられる人生を送るのだろう。


「ランクGの後に意味わかんない文字があるし…なんだよこれぇ…」


Gの後に意味わかんない文字がある。


でも小学生なので僕にはこの意味がわからない。


「はぁ…もう学校行きたくないや…」


すっかり泣き腫らした僕は、現実逃避をするようにベッドに横になった。


その時だった。


〜近くに迷宮を発見しました〜


「…っ!?」


頭の中に突然そんな声が流れた。


「な、なんだ今の…!?」


僕は驚いてベッドから飛び起きる。


〜近くに迷宮を発見しました〜


〜ナビゲートを開始します〜


「…!」


まただ。


また声が聞こえた。


「な、ナビゲート…?」


僕が頭の中で聞こえた声に首を傾げている

と、目の前に車のナビみたいな矢印が現れた。


「な、何これ…?」


矢印はまるで進む方向を表しているかのように、クンクンと動いている。


「お、押し入れの中ってこと…?」


矢印は部屋の中の押入れの方向を指していた。


僕は恐る恐る押し入れに近づいていく。


コォオオオオ…


「え…?何この音…」


押入れの中から何か洞窟の中に響くみたいな低い音が流れていた。


僕は恐る恐る押入れを開く。


次の瞬間…


「うわぁあああああ!?」


押入れの中の暗闇に僕は体ごと引き摺り込まれたのだった。












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