第10話乙女は大罪を犯す(笑)


9月7日(火) 学校


 時刻は8時40分、予鈴と同時にアリアを連れて教室に入れば何故か半分くらいのクラスメイトから拍手で出迎えられ、もう半分からは恨めしい眼差しで見られる。


 友人の横瀬へ視線を向けてみれば、横瀬は恨みを込めた視線組だった。


「……ミカエルこれはどうゆうことだ?」


「くっ……ちょっとしたトトカルチョだ…間に合うor遅刻、ちなみに大口で椎名係一月続くかでもやってる。ミカエルじゃない俺は横瀬だ…」


「……それ続くに一口な」


 そんな賭けが成立するとは我がクラスメイトどもは俺とアリアのことをなんだと思ってやがる。


「さすがの達也も1ヶ月この生活は心折れるだろ…無理だけはするなよ?」


「……………」


 どうやらこの天使は続かないに賭けたようだ。だが残念だ。なんたって辞めたくても辞められないのだ。つまり続く続かない以前の問題である。


「一口200円、オッズは続く5倍、続かないが1.25倍」


「相馬……お前かよ」


「ふっ私は信じてる海堂はできる子!」


 二学期に入ってから相馬のキャラが掴めない。


「おーい、席付け……海堂、朝からすまんな無遅刻記録更新だ。これからも椎名のことよろしく頼む」


 アリアを席に着かせて自分の席に座るちょっと席が離れているので少しは落ちける。


「達也……先生に頼まれてるからって失敗しても誰からも文句でないぞ」


 後ろの天使が悪魔の囁きをしているが無視をする。優しい言葉をかけてはいるがその実、こいつは自分の賭けを有利に持っていきたいが為の裏工作なのは明白である。


「俺の少ない小遣いなんだ。頼むな」


「何をだ…」


 語るに落ちた横瀬、少ない小遣いは確実に消える運命なのは確定しているので達也は心の中で合掌する。


学校 昼休み


「ようやく昼だーーーー!!」


「横瀬うるせえよ」


 弁当を取り出しながら吼える横瀬を一喝する。


「お前もマメな…毎日自分で作ってんだろ?」


「慣れればただの習慣だしね。それにおかずはタッパーに放り込んでるだけだから見栄え良くないし」


「うちらも一緒にええ?」


 横瀬との会話に割り込んで来たのは佐々木、その後ろに相馬とアリアが続いてる。


「いいぞ、お前らって学食じゃなかったっけ?」


「アリアが弁当持ってくるようになったから今日から教室でってなったんよ」


 もちろんその弁当は達也の手作り、見る人がみれば作り手がわかると思うだろうがアリアの弁当は見栄えも考えて詰めているので作者が同じとはわからないだろう。


 アリアの弁当が開かれると達也以外のメンツから感嘆の声が上がる。


「お〜女の子の弁当って感じだな、椎名のお袋さん料理上手なんだな」


 ナチュラルにアリアが作ったという選択肢が除外されているところに哀れに思いつつ当人に視線を向ければいたって気にしていない。


「佐々木の弁当はザ・弁当で……相馬のはキャラ弁かすげぇな作るの大変そう」


 相馬の弁当はこ○すばのめぐ○ん、杖の先に梅干しなってるのはいいな、おかずが散らばってるのは爆散をイメージしてるのか、しかしそれぞれのおかずは独立性を保ってカオスにはなってない素直に達也は感心した。

「父親の弁当と同じだからこんなもんよ」


「慣れれば手間でもない。楽しいからあっという間」


「えっ!?そのキャラ弁相馬の手作り!?」


「今日のは自信作!!」


 サムズアップでドヤ顔の相馬、達也の中で相馬の好感度が上昇した。


「亜美すごーい、私のお弁当もこんなのがいいなー」


 勘弁してくれと心の中で達也は叫ぶ、実は挑戦したことのある達也は絵心がなく挫折した過去がある。


「あれ?達也と椎名弁当おかず一緒じゃね?」


(は?いらねーところ気づくなよ)


「弁当なんてこんなもんだろ?佐々木の弁当と比べてもハンバーグとエビフライが違うくらいじゃん」


「だよなー、違うおかずがあったら交換して貰おうと思ってたのに実は俺も同じラインナップなんだわ」


 内心ほっとして、弁当を食べ始める。


「しっかしあれな、横瀬は昔からなんも変わってないな」


「それね」


 話題は横瀬の昔話、頑なに自分から話さない横瀬の過去はちょっと気になってる。


「ご馳走様、足んないから学食行ってくる!!」


「「いてらー」」


 アリアの乙女ポイントにマイナス、閑話休題。


「んー?昔会ったことあるっけ?」


 横瀬には2人に心当たりがないようだ。


「はぁ?同じ小学校じゃん、また玉蹴りあげよか?」


「はっ!?球蹴り綾か!!」


(なんか二つ名見たいのが出てきた!?)


「思い出したかエセ勇者ミカエル」


 酷い応酬を見た。


「海堂には私が説明するよ。昔、自称勇者のミカエルが居ました。彼は同じ学校にいた私を蒼い悪魔でそーまと本気で思っていました。」


「なんか始まった!?」


「ある日、勇者ミカエルはそーまの討伐に向かいました。しかしそーまは力なきか弱気ただの女の子そんなことミカエルは気づかず、戦闘は一方的、しかしここに真の勇者、綾が立ち上がりました。そして偽勇者ミカエルは真の勇者の綾に倒され平穏が訪れましたとさめでたしめでたし」


 なんともコミカルにまとめてはあるが要するに相馬をいじめてた横瀬を佐々木がやっつけた。ただそれだけだ。


「勇者ミカエルはくだらないことしてたんだな」


「達也!?勘違いするな小学校での出来事だ今でもそうじゃない」


「そうだよな、中学では違う方向で痛いやつになってたもんな」


 偽勇者とは別の方向で痛い、非常に興味のそそられた達也は前のめりなる、ここで過剰に横瀬が反応する。


「!?!?一緒だったのは小学校で中学は別だったのになぜそれを!?」


「アホか?半分はあんたと一緒に友達行ってんねん話しくらい入ってくるわ」


「偽勇者を卒業したら次は何になったんだ?」


「それがな、『私はミカエル、汝の迷える心を救う聖職者なり』つって悩み相談しとったんだって……ぷっ」


「つまり勇者敗れ、出家したのか」


 横瀬は黒歴史の暴露によって横瀬が屍となった。


「しかし玉蹴り勇者アヤか…怖いな」


「その呼び名はやめい!?」


「私にとって綾ちゃんは正義のヒーロー」


 相馬が佐々木にトドメを刺した、屍が一つ増えた。


 人に黒歴史あり、自分にはそういうものがなくてよかったと思う達也であった。


その頃のアリアさん


「おばちゃんA定特盛―」


「アリアちゃん、やっぱあのお弁当じゃ足りなかったんだね?」


周囲の生徒たち


「暴食の帰還だ……」


「A定だけだ…と」


「いや?特盛じゃん、俺食えねーよ?」


「さては新顔だな、いいだろう教えてやろう。暴食こと一年の椎名アリア1学期はお決まりの注文があったんだ…」


「説明ニキそれは……」


「ABC定食特盛ご飯2杯だ」


「は?」


「ABC定食特盛ご飯2杯だ」


「まじかよ、さすが暴食…」


side:アリア


「うま〜」


その頃のアリアさん(終)



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後書き


次回更新はちょっと空きます。


検査入院等予定が詰まってしまいました。

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女子力ゼロのアリアさん @hanikami

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