第7話天使降臨(仮面)


9月5日(日)9時 ラフォーレ椿


「それじゃあ俺出てくるから、晩御飯は19時だからそれまでに帰ってこいよ」


 達也は友達と遊びに行く為に家を出る。残されたアリアもまた友人たちと遊びに行く約束をしているだからこうして休日でもこうして起きて頭を捻っている。


「うーん、こうしていざ服が選べるとどうしてか悩む……」


 アリアの部屋、休日なので達也も踏み込まずにいたのだがそれは良かったのか悪かったのか、この部屋の現状を見れば達也は間違いなく雷を落としていただろう。


 広げられた洋服、洋服、洋服…そう床いっぱいに広げられた洋服が足の踏み場すら消し去っている。


「ワンピースで可愛い系?ショーパンTシャツでスタイリッシュ?むむむ…」


 この女、椎名アリアは女子力ゼロである。今でこそ、こうして洋服を選んでまるで女子のようだが騙されてはいけない。


ちょっと前のアリアさん


朝起きて


着替えを探す


「ちょっと匂う?」


その辺に捨てる


「お?これ着れそう、下着は…どうせ見ないしいいや」


シワあり、手でさっとして終わり


パターン2


「やば…何もない…」


洗濯済みの服なくなる(探せばちゃんとある)


「仕方ない」


コンビニでスエット上下購入


「これでよし!」


ちょっと前のアリアさん(終)


 一週間も遡ればある物を着るしかなかったアリアにとって手持ちの服を選ぶというこの時間こそ悩ましく面倒な事態だった。


「よし!ここはトレンドで行こう!」


 今年のトレンドであるニットアップを選択して姿見の前でくるくる回る。


「これでよし!散々服装をこき下ろしてくれたあいつらに目にもの見せてやる」


 そして服チョイスを終えたアリアさんは今部屋の惨状を見下ろす。


「ちょっと散らかったけど以前比べれば全然マシね…これをこうして…こうっ!」

 部屋隅に今日着ない洋服が集められた。当然畳まれていない。


「あっ!もう11時過ぎてる!遅刻する!」


 今日のアリアを見た友人達は口を揃えてこの日のことこう評した。


 天使が蘇りし日と…ルックスは一級品、着る服なければスエットで渋谷すら歩く女こと椎名アリアは今日死んだ。


 その裏には苦労人がいることをまだ誰も知らない。


翌日朝 ラフォーレ椿


「何じゃこりゃーーーーー!アリアーーーーー!」


「ご…ごべんじゃさいーーーー!」


 当然、しまわれてない服が積まれ、アイロン掛けした服が皺くちゃになったのを見て達也がキレたのは言うまでもない。

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