第2話 ブラックホール(胃袋)

カツカツカツカツ……


カツカツカツカツ……


「おかわり!!」


 なんとも豪快にどんぶりをかっこむ行き倒れ少女、もとい椎名アリアは同級生である。


「達也くんから連絡あった時は何かあったと思って慌てちゃったわ…」


「店長も新田さんに佐藤さんもすいませんでした」


 アリアが空腹で倒れていたので自分の部屋でとはならず、大人であるみなみさんに頼った。電話して事情を話すとまだ残っていた常連さんの二人が運び役として派遣されてきた。


「あっははー、こんな体験今日日できないだろうからネタ提供に感謝だぜ?」


 こんな感じではあるがうちに来た時はものすごく心配そうな顔をして来てくれたので不覚にもウルッときてしまった。


「それにしても謎のお隣さんが同級生の女の子だったなんてね。世間って狭いのね」


「まあ、女子なら警戒してインターホンに出ないのは理解できますね」


「女子じゃなくても達也くんも無闇に出たりしちゃダメよ?」


 そんな他愛無い会話の端でどんぶりをかっこむアリアの勢いは衰えない。


(どこに入ってんの!?)


「なあ、椎名さん?なんで行き倒れてたん?」


「海堂くん…食費が尽きて、どうしようも無く」


「ご両親は?バイトしてないの?」


「両親は今ニューヨーク、一人暮らしなら学校近くにって借りてくれたの、仕送りもらってるからバイトはしてない」


「は?仕送りあるなら大丈夫じゃ無いの?」


 達也の問いにバツの悪い顔を逸らしあははと乾いた笑いを浮かべる。その反応にピンと来たのは常連さんの佐藤さんだ。


「なるほど、夏休みに入っていつも以上にお金を使い込んで気づいたら空っぽにってとこかな?」


「あ〜、そうともいえなくもないともいえないか…な?」


 なるほど、学校があると日中使わない分光熱費とか安く済む、俺だって夏休み入ってからクーラー使ってる時間が多くなってるし、出費はなんだかんだで増えたからわからなくも無い。


「はぁ〜、次の仕送り日っていつなのさ?」


「毎月1日にだから明明後日…」


「2日間どうするの?」


「一日二日くらい食べなくてもなんとかな「いけません!!」る?」


 みなみさんの雷が落ちた。普段からゆるーいお姉さんなみなみさんからは考えられない迫力だった。


「明日はお店閉めます!私がお昼ご飯持ってくから二人ともお家にいること!ついでに晩御飯も作ります!いいですね?」


「「は…はい……」」


 なぜに巻き込まれた。と思いながらもラッキーとこの時は思っていた。

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