7-2

陽向ひなたの夢の世界は、見わたすかぎり一面、真っ白だった。


果てしなく続く真っ白い空。

地面には、どこまでも敷きつめられた純白の玉舎利たまじゃり


小さな文机ふづくえがポツンとひとつ置いてあり、その隣には、天まで届きそうなほど高々と積まれた経本きょうほんの山がある。

あまりに高く積み上げられているから、テッペンまでは、かすんで見えない。


その他には何もない。殺風景きわまりない世界。


「なにこれ。どーゆー夢なわけ?」

パジャマ姿の千影ちかげは、双子の弟を呆然とかえりみた。


洗いざらしの浴衣をスッキリ着こなしている陽向ひなたは、当然のようにアッサリ答えた。

「ここで、いつも、"写経しゃきょう"や"瞑想めいそう"をしているんだ。夢の中は、静かで落ち着くからね」


「って、まさか、……毎晩こんな夢を見てんじゃないよなぁ?」


「いや、毎晩こんな夢しか見ないけど……?」


「ダメダメダメーっ、やりなおしっ! テイク・ツーっ!」

千影ちかげは、大声で叫ぶなり、白く綺麗な指を「パチン」と鳴らした。

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