7-1
カラッと晴れた初秋の夜空には、クッキリしたシルエットの半月が浮かんでいた。
双子の兄の
夢をまったく見ない
この夜は、誰かがモゾモゾと布団の中にもぐりこんでくる気配を感じて、すぐにギョッとマブタを開いた。
「ひ、
「ボクの夢の世界を、キミにも見てもらいたくて」
よくよく聞けば歯の浮きそうなセリフを、みじんのタメライもなく口にする弟の浮き世離れした天然っぷりに、
「は? なんなん、急に。驚かしやがって……」
と、少しサビをふくんだ甘ったるい声でボヤきながら、自分も横向きに寝返って、
双子の兄が眠る布団の中に忍び込んできたフラチな弟は、洗いざらしの
夜の海のように
双子の弟ながら、真意をはかりきれない、謎めいたところがある。
「ごめん。でも、ボクのワガママきいてね」
そう言うなり、
次に自分の前髪をカキ上げながら、あらわになったお互いのヒタイをピッタリと押しつけあって、小声で何度も口ずさむ。
「オン・シュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ、
オン・シュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ、
オン・シュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ
……」
耳ざわりのいいササヤキ声がどんどん遠ざかって聞こえてくると、
一瞬のマタタキの合間に、ふっと軽いメマイを覚える。
カラダが宙に浮かぶような、それとも地面に沈みこんでいくような……
フワフワしておぼつかない、いつもの感覚。
直後に周囲を見わたせば、そこはもう、見たこともない異世界で。
「ななな、なんじゃこの世界はーっ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます