6-6
おりしも懐中電灯の明かりが偶然に奥にズレると、そこに、
「うっ!?」
たちまち、真っ赤な手がニュッと伸びて、
革靴の底が床の血だまりにスベって、ピアノの下に足を引っ張られるような格好でアオムケに転倒した。
「うわあーっ!? な、なんで、こんなところにウサギが……っ!?」
トートツに響いた八木の叫び声は、しかし、語尾は場違いに嬉しそうだった。
八木の腕の中には、ピアノの中から飛び出してきたウサギがチョコンと乗っかっていた。
全身が黒く、シッポだけが真っ白なヒトなつっこいウサギだ。
―――さっきの"赤い手"は、このウサギの見間違いだったのか?
靴のカカトに、妙な違和感を感じる。
ピアノの下に長身を窮屈に屈めながら、四つんばいになって足もとを確認すると、床板のパネルが数枚はがれて床下に穴が露出していた。
「おい、ちょっと、こっちを照らしてくれ!」
鑑識課員がその場にひざまづいて、懐中電灯の明かりをピアノの下に向けた。
床下には、深さが約1メートル、広さが1畳ほどのコンクリートばりの空間があらわれた。
壁面の腐食と劣化の状態からみて、西洋館の建築時から存在していたものだろう。
食糧や備品の貯蔵スペースにされていたものか。
あるいは、当時の国内外のセレブを対象に、外交的な諜報活動の目的で工作員が身を隠すためにでも使われていたものか。
現在では、まるで知る由もない。
だが、小学部の頃からこのピアノに慣れ親しんでいた
コンクリートの穴の底には、いくつもの白骨と大小の
そのうちの一体は、この学校の高等部の制服を着た人骨だった。
無数の
「
その瞬間、耳もとで、
「見つけてくれて、ありがとう……」
と、柔らかな少年の声がささやいた気がして。
ゾクッと背中をふるわせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます