5-1
楽譜台のスミに愛用の
古びた文字盤が示す時間は、夕方5時をまわったところ。
窓の外に広がる初秋の空は、ピンク色の濃淡が鮮やかなグラデーションを描きはじめた頃合いだった。
長めに伸ばしたカフェオレ色の前髪を、秀麗な白いヒタイにユラリと波打たせる
スマートなダークスーツに趣味のいいネクタイ、手入れの行き届いたレースアップの革靴にいたるまで、芸術家らしいコダワリの強さとともに、かすかなナルシシズムも匂いたつ青年だ。
1週間前の緑地公園での事件以来、小・中・高等部いずれの生徒たちも授業が終わると急いで下校をするようになったおかげで、
おかげで、一介の音楽教師である
その頃から、敷地内の公園には大きなウサギ小屋があり、小学部の低学年の生徒たちが交代で、常時20匹前後のウサギの世話の当番をするのが通例化していた。
小学生になったばかりの頃の
そして、その頃を境に、ウサギ小屋のウサギの数は、いつの間にか目に見えて減っていくようになった。
はじめは、小屋のスキ間からウサギが脱走してしまったのだと誰もがノンキに考え、壁と扉の修繕がほどこされた。
それでもウサギの
まあ、とにかくトラブルを徹底的にイヤがる人物でもあったようだし。
やがて、
同時に、ウサギ小屋のウサギの数が減ることもなくなったが、その代わり、
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