第52話 冥影仙《めいえいせん》

「なんだ!!あれで死なないのか!」 


こう問題ない!

 もう桃理とうりどのはこちらに取り戻した!

 あとは陰湖盃おんこはいと、

 封戒玉ふうかいぎょくだけだ!」


 蒼花仙そうかせんがそういった。


「それはどうですかね......」


 冥影仙めいえいせんは薄笑いを浮かべている。


「諦めるのじゃ冥影仙めいえいせんよ......

 もはやお主一人でワシらとは戦えまいて」


龍漿仙りゅうしょうせんあなたは何か、

 思い違いをなさっているのではないですか」


「なんじゃと......」


「私のどこが一人なのですか」


 そういうと片手を掲げる。

 すると、何もない空間から黒い棺がでてきた。

 その棺から人がでてくる。


「まさか、あれは!?」


 僕たちは驚いた。その顔に見知ったものがいたからだ。


沙像仙さぞうせん!?」


「あれは香花仙こうかせんの気だよなそう......」


「ああこう、間違いない......」


 こう蒼花仙そうかせんが驚いている。


「それに宝創仙ほうそうせん空姿仙くうしせん

 慈晶仙じしょうせん、皆死んだものたちじゃ......」


 そう龍漿仙りゅうしょうせんが驚いている。


「さあ、行け!十二大仙!!」


 冥影仙めいえいせんはそういうと部屋の奥に移動した。

 十二大仙はこちらへと攻撃してくる。

 龍漿仙りゅうしょうせんは五体の仙人と相対していた。


「私、龍漿仙りゅうしょうせんを助けます!

 灰混仙かいこんせんたちは先に!」


 碧玉へきぎょくは槍を構えた。


「ああ、俺とそうも!」


「ああ、あなたがたで冥影仙めいえいせんをお願いします!」


「わかった灰混仙かいこんせんここは、四人に任せて、

 冥影仙めいえいせんを倒そう!」


「わかった!桃理とうりを」 


 僕と灰混仙かいこんせんは眠る桃理とうりを背負い、

 冥影仙を追う。

 

「ふっふっふっふっ......」


 トウテンセンは笑いながら宮の奥へと向かっていった。


 追ってさらに奥へと向かうと、

 中央の屋根のない大きな部屋に入ると、

 冥影仙めいえいせんは止まった。


(ここは!?後に大きな扉がある)

 

「もはや逃げられんぞ。冥影仙めいえいせん

 私の国を滅ぼしたその罪あがなってもらう!」


万象刀ばんしょうとう!!」


 灰混仙かいこんせんがそういうと刀は伸び、

 一瞬で冥影仙めいえんせんを切り裂き両断した。


(やったのか!!)


 僕がそう思うと、

 冥影仙めいえいせんは影へと沈んでいく。

 

「その刀もらう......影陰鎖えいおんさ


 そう女の声がすると、

 何本もの鎖が柱の影から伸び、

 僕と灰混仙かいこんせんを縛りつけた。

 そして万象刀ばんしょうとうを奪い取ると、

 鎖は何もない場所へと戻っていく。

 

(女の声......)


「ぐっ!これは!」

 

 影の中から、冥影仙めいえいせんの上半身が出てくる。


「なぜ!?完全に倒したはず!」


「いや、灰混仙かいこんせん!!

 冥影仙めいえんせいの後に誰かいる!」


 冥影仙めいえいせんが鎖に巻かれた姿の後から、

 白い服を着た女が影から上がってきた。

 そして無造作に冥影仙めいえいせんを地面に落とした。


「ふふっ、かわいそうに、こんな体にされてしまって」」


 はかなげな声で微笑みながら、

 その白い服の女は片手に万象刀を持ち、

 片手に陰湖盃おんこはいを持っている。


「あなたは......」   


「わたくしは霊棺仙れいかんせん......」


 そう消え入りそうな声で答えた。


「ばかな霊棺仙れいかんせん!!なぜこんなところに!」


霊棺仙れいかんせん......十二仙最後の一人) 


灰混仙かいこんせん......そして三咲みさきとやら、

 よく働いてくれました。お陰でながき私の願いが叶う......」


「あなたが仕組んだんですか。

 玄陽仙げんようせんをよみがえらせるために」


 そういい、ふふっと笑うと、

 懐から封戒玉ふうかいぎょくを、

 取り出すと地面に投げた。


「!?」


「もはや必要ありません......」 


「どういうことだ......

 玄陽仙げんようせんの復活ではないのか」


「ええ、私の願いは白陰仙はくいんせんの復活です」


白陰仙はくいんせん

 ......仙境大乱のあと姿を消したという......」


「姿を消した......違う!あの方はあやつに!

 あの忌々しい金靂仙こんれきせんに封じられたのだ!」


 そういった霊棺仙れいかんせんの目には激しい殺気が宿った。


「どういうことですか」


「仙境大乱のあと、あの方の目的が果たされるはずだった。

 にもかかわらず、あやつは金靂仙こんれきせんは、

 何を血迷ったか、玄陽仙げんようせんとの戦いで、

 弱っていた白陰仙はくいんせんを封じ込めた。

 この陰陽宮いんようぐうに......」


「それを解くために、こんなことを計画したというのか、

 空姿仙くうしせんの気を変じる術で変化して......」


「そうです。宝創仙ほうそうせんの死者を操る封宝具

 屍操輪しそうりんを使ってね」


 そういうと首の輪を見せた。その下にアザがある。


「それは香花仙こうかせんからうけた毒か......」


「ええ......このせいでわたくし自身が自由に動けなくなって、

 色々計画が狂いましたが......」


「......香花仙こうかせんを殺し、曇斑疫どんはんえきや、

 排仙党はいせんとうを動かして、戦争まで起こして」


 僕がそういうと笑う。


「ええ、あなたたちに邪魔されましたが......

 ついでに玄陽仙げんようせんに与した仙人たちを、

 殺すつもりでしたので、おおむね成功でしょう」

 

「そんなことのために、俺の国を滅ぼしたのか!」


 灰混仙かいこんせんか叫ぶ。


「そうです。この奥の扉の封印を解くには、

 この万象刀ばんしょうとうが必要でした。

 最初、警備の兵士を操り、あなたとその娘をたてに、

 万象刀ばんしょうとうを奪おうとしたのは、

 失敗に終わりましたが......」


「あれもお前が!!」


「わたくしにとって他のことなど、どうでよいのです。

 我が師、白陰仙はくいんせんさえいてくれさえすれば......」


 そういうと陰湖盃おんこはいを掲げた


「さあ、陰の気よ。このさかずきに集まるがよい」


 そういうと、さかずきにに、

 黒い陰の気が濁流のように吸い込まれる。


「さすが、仙人たちの陰の気、すごい量だわ」


 そしてその盃を刀にあけた。

 するとどろどろとした黒い液体が刀を覆い。黒い刀身となる。 

 とてつもない気が周囲を包み込む。


(信じられない!!なんだあの陰の気!

 とてつもない力を感じる!

 あれが解放された万象刀ばんしょうとう!)


「これで扉を......」


「やめろ!!」


 僕たちは鎖に繋がれ動けず叫ぶ。


刧雷杓ごうらいしゃく


 稲妻が霊棺仙れいかんせんに落ちる。


「きゃあああああ!!」


 空を見上げると、

 白い象に乗ったコンビャクセンが杓を振るっている。


「コンビャクセン!!」


「師匠......」


 僕たちを縛っていて鎖は消える。


「貴様ぁぁぁ!!金靂仙こんれきせん!!なぜここに!!」


「俺は、この仙境のことをつぶさに見ていた。

 いつか白陰仙はくいんせんを、

 目覚めさせようとする者が現れると思ってな。 

 異質な流行り病はやりすぎたな......

 異変を感じ、ここに隠れていたのだ、

 完全に気配をたつのにかなりの時間と力を要したがな」


「なぜだ!!なぜ白陰仙はくいんせんを裏切った!」


「......あの方も危険だと思ったからだ......

 玄陽仙げんようせんだけではなく。あの方もな......

 だから、与するふりをして、

 あの方を封印することを画策した」


「許さぬ!!貴様だけは!!許さぬ!!」


 今までの、はかなげな顔とは、

 似ても似つかないほどの憤怒の顔をして、

 金白仙こんびゃくせんを睨み付けた。

 強くかんでいるその口びるからは血が流れ出ている。


「悪いがあの方をよみがえらせるわけにはいかない......」


 そういって金白仙こんびゃくせんは、何度もなんとも杓を

 雷をおとし続ける。

 信じられないほどの落雷に耐えていただったが、

 ついには黒ずみとなり倒れた。


 それを見た金白仙こんびゃくせんも、

 ぐらつくと象から落ちてくる。


「危ない!」


 僕は落ちてくる金白仙こんびゃくせんを受け止めた。


三咲みさきか......おうはくか久しいな......」


 そう金白仙こんびゃくせんは軽く答えた。


「今それどころではないでしょう」


 灰混仙かいこんせんはあきれてそういった。


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