第49話 過去

 命炎仙みょうえんせんは皆に落ち着くようにいった。


「今でていっても、桃理とうりは取り戻せないでしょう。

 私もここに来るまでに幾度も仙人の妨害を受けましたから」


「くっ!私のせいで!」


 灰混仙かいこんせんは地面を叩いた。


「何があったか話してもらえますか」


 灰混仙かいこんせんに聞くと、うなづくと語りだした。


「......私は白天はくてん世鳳せおうの王子だった。 

 七年前のある日、

 父と共に蓮曜れんようという道士が現れ、

 私に万象刀ばんしょうとうを持ち、

 この国より離れるようにいった......」


蓮曜れんようどこかで......陸依りくいさんの師匠か!)


「わけがわからないが、父の言葉をきき王宮よりはなれた。

 私が成威せいいの街よりでると、街はあかく染まり、

 爆発した......

 その空にあの龍漿仙りゅうしょうせんが見えた」


桃理とうりはあんたの妹なんだろ。

 だったら姫なのに何であの街に孤児としていた?」


 こうが聞いた。


桃理とうり......桃理とうりはみっつのとき、

 私と共に金目当ての王宮の警護兵にさらわれたのだ......

 その時アジトで、私は兵士に向かい、

 桃理とうりを逃がした。

 そのあと助けがはいったが、兵士をどれだけ探索に向けても、

 桃理とうりはついに見つからなかった」


「それで一人でいたのか」


「まだ、小さかったから、

 自分が何者かわからなかったのだろう」


(前に怖い兵士って言ってたから、

 王宮の兵士の記憶があって、逃げ回ってたのかも知れないな)


「そうですか......そのあと私が見つけたのですね。」


 命炎仙みょうえんせん優しくいった。


「......あの仙人を見つけ復讐する為に仙人を探した。

 そして金白仙こんびゃくせんを見つけ弟子になった。

 仙人となると、私はあの仙人を探して回った。

 そしてあいつにであった」


冥影仙めいえいせんか」


 こうがいうと、灰混仙かいこんせんはうなづく。


「あいつは世鳳せおうを滅ぼした、

 その仙人のことを教えると言った。

 香花仙こうかせんに弟子入りし、やつに聞けばわかると、

 そして香花仙こうかせんの仙島を教えてくれた」


「それで......あなたは、

 香花仙こうかせんのもとで何をしていた」


 そう聞いて蒼花仙そうかせんは強く拳を握っている。


「ああ、奴から成威せいいを滅ぼしたのは、

 龍漿仙りゅうしょうせんで、

 玄陽仙げんようせんを封印から解くために、

 沙像仙さぞうせんと陰の気を集めているといった。

 そのために曇斑疫どんはんえきを流行らせたとも......

 実際そこに龍漿仙りゅうしょうせん

 沙像仙さぞうせんもきていた。

 その場では殺せないと思った私は、気を覚えた」


「それで殺したのか......」


 蒼花仙そうかせんの問いに首をふる。


「いいや、

 もう曇斑疫どんはんえきは撒かれたあとだったからな。

 殺しても意味はない......それより、拡がるのを防ぐために、

 各国に薬をつくって配布した」


「首を見せてくれ!」


「首......」


 見せた灰混仙かいこんせんの首には毒のあとがなかった。


「ない......私があの時みたお前は......誰だ、

 間違いなくお前の気だったのに」


龍漿仙りゅうしょうせんに化けていた者......」


 僕がいうと、皆が黙った。


「それで、白天仙.....いえ灰混仙かいこんせん

 あなたはそのあとどうされたのですか」


 碧玉へきぎょくが話を聞いた。


冥影仙めいえいせんが排仙党のアジトにいれば、

 後で龍漿仙りゅうしょうせんの仙島を教えるから、

 ここに来る仙人を切れといわれた。」


「それであそこに......でも僕たちを切らなかった。

 桃理とうりがいたから......」


「ああ、桃色の髪は王家にしか生まれない。

 すぐにわかった......死んでなかったのだと......」


「そこに私が行ったのですね」


 そう命炎仙みょうえんせんがいう。


「ああ、あんたの言葉で冥影仙めいえいせんに会った。

 奴は信じられないのなら、

 龍漿仙りゅうしょうせんの場所を教えるといった。

 俺は疑っていたが、龍漿仙りゅうしょうせんに会えば、

 何かわかる......そう思って仙島に向かった......」


「そして、龍漿仙りゅうしょうせんに......」


「ああ、気を覚えていたから間違いないと思った。

 だが、違ったようだ......」 


「私と同じか、お前に化けていた者を見破れなかった」


「気まで同じなんてできるのですか?」


 僕は冴氷仙ごひょうせんに聞く。


「姿ごと気を変えれる者、私の知る限り、

 空姿仙くうしせんだけ......だが彼女は前の大乱で]


 そういって冴氷仙ごひょうせんは考えている。


「それで冥洞めいどうとは?」

 

「この仙境の果てにある空気しかない空間のことだ。

 仙人しか入れん」


「確実に罠だな」


 こうがそういった。


「だが行かねばならない......」


「お待ちなさい」


 立ち上がろうとする灰混仙かいこんせんを、

 命炎仙みょうえんせんが制する。


「私に幾人もの仙人が当てられました。

 おそらく封戒玉ふうかいぎょくを手に入れたことで、

 かつて玄陽仙げんようせんに与した仙人たちが、

 一部でしょうが動くはずです」


「......それはつまり、また仙境大乱がおこるということですね」


 僕がそういうと、

 冴氷仙ごひょうせんは無言でうなづいた。

 

「今ならまだ......玄陽仙げんようせんがよみがえれば、

 かなりの仙人が玄陽仙げんようせんにつき、

 仙境大乱せんきょうたいらんが起こる。

 今なら冥影仙めいえいせんを討てれば抑えられましょう」


 命炎仙《みょうえんせん」がそういう。


「くっ、私のせいで龍漿仙りゅうしょうせんが......」


 灰混仙かいこんせんが後悔を口にする。


「その必要はありませんよ。

 そうでしょう龍漿仙りゅうしょうせん......」 


 命炎仙みょうえんせんがそういうと、水が集まり、

 龍漿仙りゅうしょうせんとなった。


「ふぃ、大変なことがおこったの」


 そうのんびりと言った。

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