第48話 白天

 仙島におりると、目に見える全てが水だった。


「なんだ?水以外なにも見えない」


「みゃう」


 コマリがないた。


「下に何かあるのか」


 僕たちは水の中に入る。そこは水の中なのに森や山があり、

 魚たちも泳いでいた。


「海か......なんで海が」


 こうか首をかしげた。


「あっち......あっちから私の炎の気を感じる」


 桃理とうりがいう。

 僕たちはその気を追って水の中を進む。

 そして大きな気が二つある場所についた。


 そこには二人が対峙していた。

 一人は刀を抜いた灰混仙かいこんせんと、

 もう一人、老人が膝をついて肩口を押さえていた。


「一体なんなのじゃ急に襲ってきて......お主何者じゃ」


「貴様が!!」


 灰混仙かいこんせんのその目は憎しみに満ちていた。

 僕たちはその地に降り立ちとめる。


「まて!!灰混仙かいこんせん


「また、貴様らか......」


「はくてん......白天仙はくてんせんではないですか!?」


 碧玉へきぎょくが驚いている。


碧玉へきぎょく......なぜお前が」


白天仙はくてんせん碧玉へきぎょく

 彼が兄弟子の白天仙はくてんせんなのか?」


「は、はい、でもなぜあなたが、こんなことを」


「はくてん......白天はくてん......あなた、まさか」


 桃理とうりが思い出したように、

 灰混仙かいこんせんを見る。

 

「その銀髪......あなた兄さまなの......」


「違う......」


 そう言われた灰混仙かいこんせんは顔を背ける。


「兄さま、どういうことだ、桃理とうり


 コウがそう聞いた。


「私には兄さまがいた。成威せいいで幼いとき、

 さらわれたその時兄さまのことを少し覚えている」


「............」


 灰混仙かいこんせんは黙り、傷ついた老人をにらんだ。


「そんなことはどうでもいい......

 お前が成威せいいを滅ぼしたのかと聞いている」


「そんなことはしておらん......

 それより、その万象刀......それをなぜお主が持っておる。

 それこそ、世鳳せおうの至宝であろう」


 龍漿仙りゅうしょうせんといわれた老人は、

 はそういって刀を指差した。


万象刀ばんしょうとう!?」


「これは、私のものだからだ」


「そうか、お主、世鳳せおうの王族か......

 玄陽仙げんようせんに与し、

 ワシの封戒玉ふうかいぎょくの封印を解くつもりか」


「どういうことですか?香花仙こうかせんと、

 沙像仙さぞうせん彼らと手を結び、

 玄陽仙けんようせんの復活をさせようと、

 していたのではないのですか?」


 僕がいうと、蒼花仙そうかせんもつづいた。


「私は香花仙こうかせんのもとで、

 あなたが訪れるのを見ている。

 その気は確かにあなただった」


「......知らぬ。ワシは封印を守っていた。

 封印を開ければ、世界が混沌となるのに、

 玄陽仙げんようせんなど復活させるわけがなかろうて」


(どうなっている?気なら間違いないはずなのに)


 それを聞き、灰混仙かいこんせんもなにかを考えている。


「何をしているのです。

 早く龍漿仙りゅうしょうせんを殺し、

 その封戒玉ふうかいぎょくを手に入れなさい。

 それが私との約束でしょう」


 そう突然上から声がした。

 そこには黒い服を着た黒髪の男がたっている。


冥影仙めいえいせんお主の仕業か!」


 龍漿仙りゅうしょうせんがそういうと、男は薄く笑う。


冥影仙めいえいせん......これはどういうことだ!

 あんたはこの男が封印を開けるために、

 世鳳せおうを滅ぼしたといっていた!

 だが、この男はまともに戦おうともしない」  


「あなたを騙そうとしているだけ、あなたはあの日、

 街の外にいて、成威せいいの空でみたのでしょう。

 その龍漿仙りゅうしょうせんが王都を滅ぼす所を......」


「確かにあれはこの男だった......

 香花仙こうかせんの所でみた」


「同じ気の者はいないはずでしょう。

 何をためらっているのです」

 

 そう冥影仙めいえいせんはいうと、

 諦めたように舌打ちした。


「きゃあ!」

 

「ぬお!!」


 その叫び声で見ると、地面の中に影のなかに

 龍漿仙りゅうしょうせんと、

 桃理とうりが沈んでいくところだった。


「なっ!」


「この娘貴様の妹ですね。

 返してほしくば冥洞めいどうまで来てください。

 その刀をもって......」


 灰混仙かいこんせんが飛び、

 空の冥影仙めいえいせんを切るが、

 笑い声と共に影となって消えた。


「くっ!なんてことだ!騙されていたのか」


 灰混仙かいこんせんが飛び立とうとするのを止めた。


「まって!一人ではその刀を奪われてしまう。

 そうなれば玄陽仙げんようせんが封印から解かれる!」


「だが......妹が桃理とうりが!」


「お待ちください白天仙はくてんせん

 すぐには殺されません!あなたの刀が欲しいのだから!)


 碧玉へきぎょくがそういう。


碧玉へきぎょく......」  


「なにか来る!!」


 そう蒼花仙そうかせんが叫んだ時、

 水の中に炎が降ってきた。

 驚く僕たちの前に炎の鳥から女性と男性がおりてきた。


「あなたは!!」


「遅かったようですね......」


 それは命炎仙みょうえんせんと、

 冴氷仙ごひょうせんだった。

 

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