第47話 灰混仙《かいこんせん》を追う

 僕が冴氷仙ごひょうせんたちの元に戻ると、

 こう蒼花仙そうかせんを連れてきていた。


「おい三咲みさき、それは仙人か」


「いいえ!私は碧玉へきぎょく!まだ道士です!

 未麗仙みれいせん

 金白仙こんびゃくせんの弟子です!」


 僕はみんなに未麗仙みれいせん先生の話をした。


「ならば、少しは時間的猶予があるということか......」


 そう冴氷仙ごひょうせんはうなづく。


「しかし、本当に香花仙こうかせんが、

 玄陽仙げんようせんの封印を解くために、

 曇斑疫どんはんえきを作ったというのか......」


 蒼花仙そうかせんは呟いた。


「ありえませんか」


 僕が聞くと、蒼花仙そうかせんは、

 少し逡巡しゆんじゅんする。


「......まったくない話ではない......あの人は人間を嫌悪していた。

 幼いとき戦争で奴隷になっていた経験から、

 玄陽仙げんようせんに与したと言っていたから......」


 そう言葉少なに語る。


「だが、殺してないという、灰混仙かいこんせんに、

 ちゃんと話しは聞きたい、

 そのあとどうするかはわからないが......」


「正直僕も、灰混仙かいこんせんに話しをすべきだと思う。

 彼は世鳳せおうの王都を滅ぼした仙人を追っていた。

 仲間にできるかもしれない。

 彼の強さなら、こちらはかなり有利になる」


 僕がいうと、寝ていた桃理とうりがゆっくり起き出す。


「それなら、私もいくわ......」

 

「動いて、大丈夫なのかよ桃理とうり」   


「平気よ紅花こうか......

 冴氷仙ごひょうせんにかなり気をわけてもらったわ。

 それに私じゃないと、

 灰混仙かいこんせんを見つけられないでしょ」


「......俺は今のこの国に降らせた雪を戻している。

 あれは俺の気を使っているからな。

 戻せばかなり気を回復させられるだろう」


 冴氷仙ごひょうせんはそういった。


「わかった、僕と桃理とうり碧玉へきぎょく

 こう蒼花仙そうかせんで、

 灰混仙かいこんせんを探そう」


 僕たちは桃理とうり炎追印えんついいんで、

 灰混仙かいこんせんを追った。


 そして僕たちは灰混仙かいこんせんがいるとみられる、

 山皆さんかいという国に向かっていた。


蒼花仙そうかせん

 香花仙こうかさんのところにいたとき、

 誰か仙人を見なかった?」


 僕が聞くと蒼花仙そうかせん

 思い出したようにうなづいた。


「......確か見かけた沙像仙さぞうせんだ。

 帰ったあとで香花仙こうかせんがいっていた旧友だと......

 そしてもう一人......老人だった。

 名前を龍漿仙りゅうしょうせんといっていた......」


封戒玉ふうかいぎょくをもつ、

 龍漿仙りゅうしょうせんか......

 やはり玄陽仙げんようせんの封印を、

 解こうとしているのか」


 僕が考えていると、碧玉へきぎょくが聞いてくる。


三咲みさきさま。 

 未麗仙みれいせん先生の元で修行しましたが、

 どのくらい修行したのですか?」


「えっ?うーん、二年かな」 


「い、二年......あと一年と半分あの地獄の修行を......」


 碧玉へきぎょくは絶望的な顔をした。


「そんなに厳しいの碧玉へきぎょく


「はい桃理とうりさま。金白仙こんびゃくせんは、

 あまり修行をつけてくれませんでしたが、

 未麗仙みれいせん先生は、それはもう......

 何度か死にかけました。あと一回ほぼ死にました」


 そういって震えながらひきつった顔で答える。


(僕もだ......僕は三回......これあと二回はあるな)


蒼花仙そうかせんさまと紅花こうかさまは、

 香花仙こうかせんさまの所で修行なされたのですよね。

 どうでしたか?」

 

「俺は道士までだが、それほど厳しくもなかったな」


「私もそんなに感じなかったけれど...... 

 なんだろう碧玉へきぎょくどの、

 私の顔に何かついてるですか......」


 じっと蒼花仙そうかせんの顔を見ていた、

 碧玉へきぎょく蒼花仙そうかせんが聞く。


「あ、いやあ、ずいぶんきれいな女性だと思って、

 お化粧は何を使っておられるのかと」


「私は男ですし......化粧はしていないです」


「えっ!?あっ、すみません!」


 隣でこうが笑っている。


「そうよね。私より肌もきれいだし、

 髪もさらさらだわ。生意気ね」


 桃理とうりがそういうと、

 更にこうが腹をかかえて笑った。


「笑うな......」


 蒼花仙そうかせんが樹界剣を抜いて、

 こうにきりかかる。


「おっと、だったら髪を切ればいいんだよ!」


「短いときに女性に間違えられたからだ!」


 そういうと、蒼花仙そうかせんこうは、

 剣と棍でこうとつばぜり合いをしている。


「あわわ、私のせいで大変なことに!」


「ほっときなさい、それよりこの五人で、

 あの灰混仙かいこんせんと戦えるかしら」


「えっ?そんなに、

 灰混仙かいこんせんって強いんですか!?」


「ああ正直、十二大仙に匹敵するかもしれない......

 だから味方になってもらいたい。

 世鳳せおうを破壊した仙人を探しているなら、

 味方になってくれるかもしれない」


 僕がいうと、碧玉へきぎょくは考えている。


「そんなに強いのですか......こんな時、

 白天仙はくてんせんがいてくれれば良かったのに」


白天仙はくてんせん......碧玉へきぎょくの兄弟子の」


「ええ!金白仙こんびゃくせんも、

 自分に匹敵するといっていました!」


 嬉しそうにそういう碧玉へきぎょくの隣で、

 桃理とうりがなにか呟いている。


「どうしたの?桃理とうり


「いえ、はくてん......いえ偶然ね......勘違いだわ。

 それより近いわよ。あっ!あの仙島よ!間違いないわ!」


 そういう桃理とうりの指先に、

 ひとつの大きな仙島が見えてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る