第30話 永銀《えいぎん》
僕たちは案内されたこじんまりとした家にいた。
そこそこきれいにされていた。
「
詳しいはずだ」
「......ええ、帰ってくる気はなかったのですが......」
「どうして?この国がおかしくなっていたからですか?」
そう聞くと、
「いえ、私はここを捨てた、ゆえに来る資格はなかったのです......」
「資格......」
「......
親もわからない孤児でした。
ここを牛耳っていた
二人で町にいっては盗みを繰り返していました。
その時はこの国からでていくことすら考えられず、
生きていくことに精一杯でした」
このみすぼらしい家を懐かしそうに見渡す。
「八歳になったある日、
一人の仙人が降りてきました。最初は化物だと思いましたよ」
そういって、何かを思い出すように左を見る。
「仙人は、お前たちには気を操る資質がある、
私のもとで修行して仙人にならぬか、そういいました。
それが我が師匠となる
そこで私と
才があったのか十二で道士となりました」
「えっ道士? でも
「ええ......道士となって私と
貧しいものに金や食料を与え、最初から
この国を変えたかったのでしょう......」
「だが、あなたは違った」
僕がそう聞くと
「ええ、人は変わらない......そう思っていたのです。
そういう
私はこの国が変わるとは思えなかった。
昔からみていた大人たちは、
虚ろな目をしてなにもしなかったし、
帰ってきてから、
ただ不満をいうか、なにもせずいるかのどちらかだった......」
「だから仙人になるためにここを出た......」
「生きていても意味がない、そう思っているような、
ここの人たちのようになりたくはなかった......」
そう言いながら、
次の日から二日、僕と
この区画を回って病人の治療にあたった。
「ふう、
手当ての仕方を教わっていて良かった」
「とりあえず、重体のものはもういないですね」
「ええ、それにしても、
「そうですね......しかし、だから危うい」
「えっ?」
「
あいつが間違った選択をした場合、
彼らも同じ様に進んでしまう......そんな気がしてならない」
僕たちが家に帰り暗くなったあと、
「
「きましたね」
「ええ......行きましょう」
僕たちは
「用意はできてる。俺とお前たち二人は交易商として、
王宮へ向かい王にあう。
そこに宰相、
僕たちは交易商の衣装に着替え、
区画の裏にある通路から外にでると、
王都に入りなおし、王宮へと馬車に乗った。
「それにしてもよく王に会える算段がついたな
「この国の全てのやつが、
国のやることに忠実に従ってる訳じゃねえからな」
「腐敗役人ですか......」
そう僕がいうと
「どんなにきれいに繕っても、必ずほつれってのはでるもんだ......
さあ王宮だ、お前ら交易商らしくしろよ」
王宮の前の門を潜り馬車を降りる。
待っていた従者にうながされ衛兵が並ぶ王宮に入る。
白い王宮はチリひとつなく、
従者たちは微動だにせずたっている。
あまりの静かさに歩く音だけが響く。
正面に大きな部屋が見える。
「王、
その部屋の前で従者はそういって止まった。
部屋の真ん中に玉座があり、そこに太った王が座っていて、
そのそばに銀髪の老人がたっている。
周囲には大臣や衛兵たちが囲んでいた。
僕たちは膝をつき座った。王とはかなり距離がある。
銀髪の老人が前へと進みでた。
(これが
大仰な服のせいで首は見えない。
「私は
お前たちが
ここでの交易許可を得るため参ったそうだな。
だが、この国は今以上の交易を必要とせぬ。
こたび、
すぐに帰るがよい」
そう厳しい顔で
「そうおっしゃいますが、ここでは作物もあまり育たず、
外からの作物に、頼っていらっしゃいますよね」
「ぬう......」
その言葉に、いまいましそうに
「しかも今年は外の国も干ばつが続き、作物が不作とのこと、
私ども
取引しても損はしますまい」
「......足元を見るなら、
「その様なつもりはありませんよ。
それに、この果物をひとつ口にしてみられれば、
良質なのはわかるはずです」
そういって荷物から果物を取り出した。
「要らぬ......わかった取引ならしてやる。
使いのものを寄越すゆえ、帰るがよい」
「......その前にこちらを差し上げます」
そういうと
「それは!?」
「はい
「十二大仙、
なぜ貴様が!」
「
その弟子から売られたものでございます」
そう
「
(驚いている!?
殺してるなら驚かないはず、
「クックックッ、はっーはっは」
「これは愉快!あの
(あの?
その瞬間、
「!!?」
そして
王の側にいて剣を振り上げた。
(
「
そう
王と
「くっ!」
僕と
「軍を呼べ!」
周囲の家臣たちがいい、衛兵が槍を構え囲んだ。
「何のつもりだ
「知れたこと、王を殺してこの国を解放するのさ、
お前たちもどかねえと殺す」
その目は殺気をたたえていた。
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