7-3
海に近づくにつれ、カーナビの地図の表示はアイマイになった。
「昔は、禁足地じゃったもん。……ノロの
鈴が、苦しげに肩で息をはずませながら、とぎれとぎれに言った。
ペットボトルを片手に持った陽向は、砂浜に停車した車から真っ先に飛び降りると、
「じゃあ、鈴くんのプライベートビーチですね。いつか千影も連れてきてあげたいけど、旅が苦手だからな、アイツは」
と、両腕を夜空に向かって大きく伸びをしながら、つぶやいた。
霧雨はまだ降り続いていて、海面はスモークをたきしめたみたいにモウモウと煙っている。
波の音すら濃霧に吸い込まれてしまったかのように、異様な静けさが一帯に張りつめていた。
あたりは、海に削られた断崖の壁が続いている。
その一角に、長年かかって海の塩と波に浸食されたと見える洞穴が、ポッカリ口を開けている。
高さと幅ともに2メートル前後の大きさの穴だ。
2、3歩先はもう暗闇で、どれほどの奥行きかは見当もつかない。
地面は浅瀬に浸った岩場で、すぐに星尾のローファーの中は冷たい海水を注がれてしまった。
「すごい
陽向は、感心したようにタメ息をついた。
星尾は、鈴を背中におんぶしながら陽向のもとに駆け寄ると、率直に答えた。
「はあ。……足がすくみます」
ピリピリとした悪寒が、微細な無数のムチのように全身を叩きつけてくるような感覚があるのだ。
洞穴に近づくほどに、その感覚が強まる。
濃密な霧に閉ざされた異様な静寂も、息がつまるほどに空気を硬直させていた。
陽向は、ヒョイヒョイと無造作に浅瀬の岩を飛び移りながら、真っ暗い洞穴の中に進んでいく。
「さすが、星尾さん。自然と"
しっとりとした涼やかな声が、洞穴に反響して妖しく四方に響きわたる。
星尾は、手にした懐中電灯を前方に照らしながら、急いで彼の後に続いた。
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