7-2
星尾は、視線をしっかり前に向けたまま、ハッと息をのんだ。
「
「"
「ホタルちゃんから、聞いたことあるよ。白い風呂敷をかぶって、天女みたいに空から降ってくるって……」
「
鈴は、ナゲヤリに吐き捨ててから、また苦しそうにセキこんだ。
姿勢よく後部座席に座っていた陽向は、脇に置いたリュックの中を探り、蠱毒の水を満たしたペットボトルを取り出すと、
「……よくない日より、いい日のほうが増えたら、雨を好きになれますよ。きっと、これから。大丈夫」
涼やかに屈託なく言ってから、水の中をゆったり浮遊する瑠璃色の虫を目の前に掲げてジッと見つめ、
「ああ、やっぱり。ボクは、大変なことをしちゃいました」
と、深刻な口調とはウラハラに、ノンキに小首をかしげた。
星尾は、ルームミラーごしに聞いた。
「どうしたんですか、祭守?」
「じつは、……今朝、コップの中から移し替えるときに、うっかり、蠱毒の邪霊を調伏してしまってたみたいで」
「そんな、まさか……!」
星尾は、ポカンと口を開けて絶句した。
えりぬきの神職者たちが戦々恐々として"悪鬼"だなんだと騒いでいたものを、朝食の膳についていた竹の箸でつまんで神水にくぐらせただけで、退治していたというのか。
それも、"うっかり"とは……。
「どうりで。こんなに早く鈴くんに"呪い返し"があらわれるのは妙だと思ってたんです」
「だ、だ、だって、……それじゃあ、今そこにいるペットボトルの中の虫は、なんなんです!?」
「2年前からずっと星尾さんに
陽向は、悪びれもせずアッサリ言った。
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