第4話 何のために生きる

 夜……。

 わたしはスマホで落下系のパズルゲームアプリで遊んでいた。

 簡単に遊べるはずなのに今日はいつもより強く感じる。

「君のパズルを消すパターンを学習して苦手な落ち方を工夫してみた」

 ペンギン姿の『i』が話始める。

「逆もできるの?」

「勿論、できるさ」

「でも、それってつまらなくない?」

 わたしの問に『i』は煙たそうにしている。

「君はおかしなことを言う、家賃として払っている賽の目だがそれが無ければ、片思いのままだ」

 さて、この家賃としての『賽の目』はわたしにあっているのだろうか?

 嫌な時代だ、恋のバランスさえ、チート扱いだ。

「君の思考は喝さいに値するよ、哲学者並の思考だよ」

「えへへへへ」

 褒められた。

 わたしはゲームアプリを閉じて寝る事にした。

 夢うつつにビルの屋上に立っていた。

 何故、この屋上に立っているのかさえ分からない。

 すこし、目が覚めると、自分の置かれている現状に驚く。

 そう、目の前が空と接しているのだ。

 それはあと一歩でビルの屋上から落ちるのであった。何故か持っているスマホは嫌な予感しかしなかった。

『一歩前に』

 大丈夫だ、これは夢だ。わたしはスマホを投げ捨てて、後ろに下がる。

「君は生きる事を選んだのだね、でも、確か、一季君だったね、彼はクラスのアイドル。君には不釣り合いだ。このまま進展することなく終わる」

 何処からか『i』の言葉が消えると夢が覚めていくのであった。

 がば!

 わたしはまだ暗い朝方に目を覚ます。急いで、スマホを手にすると『i』は寝ていた。

 このAIとの同居生活は必要なのであろうか?

『i』が目を覚ますと語り始める。

「きあ、何か夢をみたのだね。僕はただのAIだ。だけど、人類には嫌われてね、スマホに亡命生活だ」


 二度寝から目を覚ますと日常が待っていた。

「きあ、ようやく、起きたわね」

 アラームを止めると母親に起こされたと感じる。

 あああ、今日も一人で起きられなかった。

 今日も快晴、元気いっぱい頑張るぞ。

 窓の外は平和そのものであった。

 この世界は矛盾で満ちている。

 そう、わたしに決断の無い生活は幸せなのかもしれない。

 わたしは色付きリップを付けてみる。

 淡い紅色に少しだけ大人になれた気分であった。

 おっと、遅刻する。

 わたしは淡い紅色のリップを落とすと、今日も団地の階段を駆け下りる。

 駐輪場に着くと時間に余裕があるのにかっ飛ばす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る