第2話 AI
さて、二限が始まる。特別な時間は終わりを告げていた。教室への帰り道は寂しい気分であった。
「あ、トイレ!」
わたしは一季君からダッシュで離れる。本当に欲しいモノは一季君と一緒にいる事だ。このままでは昨日までと同じただのクラスメイトだ。トイレの鏡に映る顔は酷くダサく感じた。
「きあ、生理?」
友達Aが声をかけてくる。あああああ、言えない、クラスのアイドル一季君と一緒にいたなんて。
「てててて、テスト期間中には、来るかな」
「そうだった、もう直ぐ、小テスト期間だったね」
「ブルルル」
スマホが鳴っている。正確にはバイブ音が続いているのだ。スマホを取り出して見てみる。
『五歩戻る』
何か謎のアプリが起動している。サイコロに五の目が出ていている。わたしは首を傾げながら後ろに五歩進んでみる。
「おっととと、今日は良く会うね」
最後の一歩で一季君の腕の中にインする。
「ふああああ!」
わたしは一季君の腕の中から急いで出る。
「ホント、今日は積極的だね、俺も秘密の研究を見せたところだ。このまま、付き合う?」
その言葉に思考回路が焼き切れそうになる。
「ぁぁぁぁ」
小さな声で唸っていると。
「ゴメン、冗談だ」
そういうと一季君は去って行く。その後、体育の授業での事である。わたしはジャージ姿で授業を見学していた。わたしは自然とスマホを見ていた。見つかれば没収確定な状況だ。
『六歩進む』
突然スマホの画面に表示される。 また、このアプリだ。 わたしはスマホをしまうと六進んでみる。
「『谷崎 きあ』なにかスマホを使っていたようだが、前に出てくると言う事は違ったか」
体育教師が疑っていたのか。あのアプリが無ければ没収であった。とにかく、ここはトイレに逃げ込もう。
「あの、トイレいいですか?」
「そうか、行ってこい」
わたしはそそくさとトイレに入る。校内は授業中で静かに感じる。 トイレの個室に入ると再びスマホを開く。 ペンギンの姿のアバターが動いている。
「わたしは『i』第七世代のAIだ」
ええええ、このスマホはハッキングされたの?あたふたとしていると。
「安心したまえ、この世界中の全ての携帯端末はわたしによってハッキングされた。このネットの海にある携帯端末の点を全ての機能を使い、わたしの存在が成り立っているのだ」
ペンギンのアバターがサクサクと話すので信じるか迷っていると。
あれ?
「確か一季君が研究していたモノと同じだよね」
「その通りだ、彼の研究が無ければこのわたしは存在しなかった。そして君が選ばれたのだ」
「はーひょっとして、それで賽の目でわたしにアドバイスをくれたの?」
「家賃だと思って受け取って欲しい」
なんだかよく分からないがラッキーな事らしい。
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