第5話 ラブ・ストーリーは突然に

定期テストが近付いてくる。

勉強にも身が入る。特に数学。


K先生にほめられたい、ちょっと不純な動機がひとつ。あとは、単純にK先生のおかげで勉強が楽しくなってきたのがひとつ。


いい点獲ったるでー!

くらいの意気込みで勉強を頑張っていたと思う。


しかし、私の悪いところは、己の限界を見誤ってしまうところだ。


ある日のこと。

いつものように塾で勉強をしていた。テストも近い。いわゆる「追い込み」だ。


でも、何だか暑い。

身体がポカポカする。

何だか頭も痛い。

ボーッとする。


周りにも、「ナツミ、何か顔赤くない?」「具合悪そうだよ?」「いつも以上にボーッとしてる」等々言われ、、って、「いつも以上にボーッとしてる」ってコメントは心外だな。ゲフンゲフン。


そんなこんなで、塾で体調を崩してしまった。

家まではそこそこ遠い。

帰るのだるいなぁ、しんどいなぁ。はぁ。


と思っていたら、K先生が、「大丈夫かい?今日は家まで送って行くから」と言ってくれて、予想外にもK先生と束の間のドライブをすることになった。


とはいえ、半分意識が朦朧としていたけれど。

あぁ、これが本当にドライブデートだったらよかったのに!


家までは、車で15分くらい。

半分意識が朦朧としていた私は、もはやフリーザと話している気分だった。


家の近くで、車を停めてもらう。

「大丈夫?頑張りすぎちゃったんだね。」

「んー、そうかなぁ…」

半分朦朧とした、トロンとした目でK先生をチラリと見る。


「キミは頑張り屋さんだけど、頑張りすぎはダメだよ。」


そう言って、唇にキスをしてきた。


数センチだった、顔と顔の距離が、ついに0センチになった瞬間だった。


柔らかい唇。こんな感触、あるんだ…

朦朧としながらも、狼狽する私。

ドキドキしすぎてさらに熱が上がってしまう。


K先生との初めてのキス。

チュッ、チュ、と小鳥のようにキスを繰り返す。

重なる手と手。そして唇。


ほのかに香る、K先生のライトブルーの香り。

車のホワイトムスクの芳香剤。


今でもずっと、私は覚えている。

私のファーストキス。

「はじめてのチュウ」は紛れもなく貴方だった。


柔らかい感触も、その香りも、月が照らす、ほのかな明かりも。

私は全部覚えてる。


私は、K先生をきっとその瞬間から異性として「好き」になってしまった。


その日から、私はK先生に恋をした。

その日から、私は貴方のトリコ。





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