第4話 ひとつひとつ、越えていく壁

それからというもの、授業の後には、2人きりになった教室で、後ろからハグをされながら数学を教えてもらったり、手を握りながら、関数の勉強を教えてもらったり。


心地よい、ライトブルーの香りに包まれて、至福の時間だった。

苦手な科目の勉強って、どこか苦痛なはずなのにね。

K先生の、バックハグの破壊力といったら。

相変わらず、声はフリーザだけど。笑


そんなことをされればされるほど、私の心臓の鼓動は比例してドクンドクンしてしまうのだが。

どうしてくれようか。


そんな不純な理由で、私は関数には強くなった気がする。


手を握ったり、ハグをしたり。

それでも、その先の「アレ」はまだだった。

そう、「はじめてのチュウ」だ。


しかしながら、中学1年生の私はファーストキスなんてもちろんまだだし、ちょっとだけ興味はあったけれど、それはどこか、男子がちょっぴりエッチなマンガを見た時に感じる、ドキドキ感に似ていた。


いわゆる、妄想ってやつだろう。

憧れはあったけど、それがどんなものかなんてわからないし、いつやってくるのかもわからない。

もはや、自分には無縁だと思っていた。


「はじめてのチュウ」なんて、某アニメでしか知らない。


K先生のことは好きだけど、この「好き」はどんな「好き」なんだろう?


恋なんてしたこともない、なんと言ってもまだまだ12歳。せいぜい、アイドルの「推し」にキャーキャー言っているくらいだ。

愛だの恋だのにはまだまだ早かろう。


自分の中で湧き上がる、K先生への「好き」にいささかの疑念を感じつつも、それが恋だなんて思っていなかった。


ただの、「好き」。


あの時の私は、「優しい」K先生が、「好き」だった。

どんな「好き」かはわからないけれど。









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