第24話 雪解け ③

降り積もった雪が、雨混じりの降雪に溶かされつつある。寒い日々が続くも少しづつ降った雪が積もらなくなってきた。

長い冬が、やっと、終わろうとしていた。


溶け切った岩肌に覗く食用になる若草の芽や根を少しだけ集め始める。

薬草にもなる根も、少しだけ見つかった。

崖っぷちや岩肌はまだまだ危険があるから、欲張らずに少しだけね。

少し前に干して保存した葉物が尽きたから、見つかって素直に嬉しかったりする。


煎った豆と干した自家製の保存食をかじりながら、囲炉裏に吊るした鍋に味噌玉を放り込み水を少し足す。ひと煮立ちさせてから、収穫してきた葉物を千切っていれ、アクを取りながらかき混ぜた。


ふと思い立ち、呼んでみる。


「主、聞こえるか?」


瞬時に土間に現れた主は、子鹿の首を咥えていた。

仕留めたばかりだろうか?まだ息のある子鹿は足を振っていた。


「いつも有り難うな。いつもの通り下処理お願いできるか?」


軽く首を振った主は、消え去ったかと思うと直ぐに血抜きをして腸を取り去った子鹿を持って現れた。


「早いな、有り難うな!」


土間に子鹿を置いた主は、いつものように小さくなって肩の上に乗ってきた。頭を撫でてやると、もっとと言うように掌に擦り付けてきた。まだ幼体の頃からの付き合いだから、可愛くて仕方ない。


「さあ、さっさと解体して下処理しようか!」


主は心得たもので、一瞬で皮は剥がされ肉は部位ごとにバラされていく。必ず私の目の前で処理するのは、やっぱり褒めてほしいのかな。

たまには大袈裟に褒めてあげるだけではなく、一緒に過ごしてあげるのも良いのかもしれないな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る