第23話 雪解け ②

咥えた兎を土間に降ろした主が、まるで褒めて欲しいと言うように小さくなって私の肩に乗ってきた。


「どうした?褒めてほしいのか?」


頭から背にかけて撫でながら、聞いてみる。

身体を震わせながら私の掌に押し付けてきたから、褒められて嬉しいのだろう。


「兎、ありがとうな。雪解けまで食料が持ちそうにないから助かるぞ。」


よく見ると、兎は既にはらわたを抜かれているようだ。


「器用だな?手間が省けて嬉しいぞ。」


水辺の側でもなければ、はらわたの処分に困るところだからな。


兎とは言っても、魔物の類だからソコソコの大きさがある。

一匹手にとって確かめた後、頭を落として皮を剥いで肉を切り分ける。

夕食用に片足分だけ残して、残りは薄く削ぎ切りにして網の上に並べて囲炉裏脇に吊るして保存用に加工する。

毛皮は街で売りやすいように、後で鞣すか。


残した片足を切り分けて大鍋放り込み、水を張り火に掛けて煮立ったらアクを取りつつ遠火に直してから残り少なくなった干した葉物と芋がらをを入れ水を足す。

半分程まで煮詰めてから味噌玉を放り込み、味見をしつつ塩で味を整える。

これだけあれば、向こう一週間位はこれだけで過ごせるだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る