第22話 雪解け ①
積もった雪が、少しずつ 少しずつ減り始めた。朝の冷え込みは相変わらずだけど、昼間の太陽の光で僅かずつに溶けていく。
小屋の周りでは、小動物の動き回る気配が感じられるようになった。昼間には小鳥たちが飛び回るのが見られるようになった。
移動出来るようになるまで、あと一月程だろうか?
雪の下と祠に保存した野菜や根菜は少し前に尽きて、干したものと漬物にした分が僅かに残るだけになった。
魔力袋には少しだけ保存してあるけど、これは『非常用』だから手を付けたくない。
保存を始めた頃はここまで容量が大きいと思わなかったので、少ししか入れてなかったから。
水瓶の中は凍っていたので、囲炉裏に火を入れ鍋を吊るし、裏口に積もった雪を一抱え入れる。溶け切って温くなったところで上澄みだけ空の水瓶に移し、残った湯に布を浸して顔と体を拭く。
本当は髪も洗いたいところだが、乾かすのが手間だからもう少し暖かくなるまで我慢しようか。
短く切れば簡単なんだろうが、『拘り』があるから理由無く切りたくはない。
鍋の残り湯を捨て、干し肉と乾燥させた葉物と瓶に移した水を少し加えて朝飯用の汁を作り始める。沸騰したところで味噌玉を一つ加え火から下ろしてへらでかき混ぜた。
椀に移し、干して焼いて固めた保存携行食を汁に浸しながら食べ進めて味見をする。これなら十分に使える。干し終わってから三月程保存してこれだけの味なら満足できる。
食べ終わったところで汁の残りを小鍋に移し、ふと思いついて主を呼んでみる。
「主、聞こえるか?」
瞬時に現れた主は、二匹の兎を咥えていた。
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