第19話 終わりの始まり

「では、我々と王都まで来てほしいのだが、もうすぐ雪になる。そこでだが………」


「心配いらないよ?貴方達だけなら。」


「どういう事かな?」


「私だけならここで冬を越せるから。主!聞こえるか?」


少女の肩に、突然出現した小さなフェンリル。

もう、何を見ても驚かないつもりだったが何とか叫び声を上げたくなるのを堪えた。


「頼む!二人を王都まで送ってくれ。貴方達は、春になったら私の居場所を作って、迎えに来てくれる?」


立ちすくむ私達の間に降り立ったフェンリルが一声咆哮を上げると、私達は王都の城壁の前に居た。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「………行ったか、無事に済めば良いが?」


二日後、主が帰ってきた。


「………そうか、残念だな?」


予想通りとはいえ、春になったらすぐにここを引き払わなければならなそうだ、

あの二人は、依頼主に私の存在を報告した後、直ちに処刑された。

主が助け出す事も出来ないほどの早業だったようだ。

依頼主は、私が主に指示した通り殲滅された。

これで私の存在は知られてはいないはずだが、用心に越したことはないだろう。


今度は、何処に行こうか?

誰にも知られない場所はもう無いのかもしれない。


「ジイジ、バアバ、また一緒に来てくれるか?」


私の周りを舞う、ジイジとバアバと、仲間達。


今回は手に入れた袋が有るから、移動は楽になるけどな〜。


雪が降る前に、もう少し薬を造っておこう。

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