第16話 依頼 ①

その依頼を受けたのは、偶然だった。

受けるはずだった案件が無くなり、途方に暮れていた時の事だった。

人探しの案件を受けないかと誘われて、詳細を確認したいと伝えたものの受けてからでないと教えられないと断られてしまった。


この様な怪しい依頼は避けるべきなのだが、蓄えが尽きかかっていていた私達は破格の報酬を約束され前払金まで支払われたので受けてしまった。


探し人は、漠然としていた。


12〜3才の恐らくは少女。

人との接触がない場所に隠れ住んでいると思われる。

ひとり暮らし。又は、老人少数と一緒に暮らしている。

そして、決め手は莫大な魔力を持っていると思われる事。

期限は無期限、但し5年以内が望ましい。


年に一度報告時に一年分の報酬と活動費を支給。

候補を見つけたら報告のみで連れ帰る必要なし。

探し人をしていること以外は他言無用。


はっきり言って、怪しすぎた。


具体的な情報が全く無いまま、旅支度を終えた私達は東の山奥を目指して出発した。

王都から数えて東に山を三つ程越えた奥地からは未踏地だったことが決め手だった。

まあ、他にどうしようもなかったこともあって、当てずっぽうでもあったのだが。


4つ目の山を越えた辺りから、獣道すら見当たらないような険しい道程だった。


野営を続けながら、獣や魔物を退け食料の補充の代わりにしながら5つ目の山を超えたときには三月の時が過ぎ去っていた。


これ以上奥地に進むと雪が降り積もる前に撤退できなくなる所まで来た時に、山の木々に人の手が加えられているのに気がついた。

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