第8話 嵐の後⑤

「まだ起きないほうが良い。表に倒れている身なりの良い男はどうすればい良いか?」


「助けられるなら頼む。私の仲間だ。」


「………わかったよ、もう息が無かったが上手く助けられたらそれなりの物は貰うからな?駄目だったとしても、恨まないでくれよな。」


返事を待たずに、表の男の所へ。


状態保存を解除して、心の臓へ右の掌を当てて一気に気を送る。

体が跳ね上がるが、まだ足りない。

二度三度と送り続け、やっと息を吹き返した処で私の気力が限界になった。


もう、母屋に運ぶ力も残っていないので、再び状態保存を掛けてそのまま捨て置く。

この力を他人に使ったのは初めてだ。

こんなに上手くいくとは思わなかった。

もう一度やれと言われても、暫くは御免だな。


母屋に戻り、


「気を送って息は吹き返させた。力を使い過ぎて私はもう限界だから休ませてもらうぞ?保存を掛けたから暫くはそのままでも大丈夫だから。」


驚き何かを尋ねたそうな男を無視して小屋へ戻り、回復薬を取り出して白湯を用意して飲み下す。


豆と木の実を炒ったものを齧り、干した野葡萄の実を幾つか口に入れた所でやっと人心地が付いた。


二人の男の傷跡は、何か鋭いものに切り裂かれたようだった。

この山に居る獣や魔物では付かない傷だ。

刀傷とも少し違う様だったな。


後で聞いてみよう。

何か悪いことが起きなければ良いが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る