第7話 嵐の後④
沢に降りて薬草を取り、魚を籠から取り出して捌き終わったのが日も高く昇った頃だった。
嵐の後は収穫が少ないことが多いのだが、今日は大物も含めて大漁だった。
薬草も充分な量を確保出来た。
これで薬を使った分も補充出来るだろう。
強壮効果のある物も作れそうだ。
木の実も、嵐の大風で落ちたものを拾い集める事が出来た。
欲しかった栗も沢山拾えた。
これで、遠くの山まで行かなくても済みそうだ。
冬を超すにはもう少し必要だが、これでなんとかなるだろう。
明日にでも、もう一度拾いに来よう。
山の小動物との競争になるかもしれないな。
野草を刈りながら帰り道を歩く。
今日は主が守ってくれているので、周りに気を張らなくて良いので気楽だ。
いつもなら周りを警戒しながらなので、こんな風に旨い草を刈りながら帰るなんて出来はしないから。
背負った籠にどんどんと放り込んでいく。
途中から、干して保存食に出来る物を刈っていく。
今夜の汁は、ご馳走だな。
無事に小屋まで戻り、魚と薬草の下処理を終えてから母屋の男の様子を伺う。
まだ気を失ったままだ。
囲炉裏に鍋を吊るし湯を沸かす。
小屋に戻り、保存食用の草の下処理をして抱えて母屋に戻ると男が目を覚ましていた。
まだ話せないようなので、沸かした湯で味噌玉を溶き冷ましてから水差しで飲ませてみる。
作った分を全部飲み終えたところで、
「ありがとう、助けてくれたのは君か?」
男がかすれた声を上げた。
言葉が分からないふりをして、首を傾げる。
敵かもしれない者に、まだ余分なことを教えたくないからな。
黙ったまま薬草の青汁を作り、昨日と同じようにもう要らないと言うまで飲ませた。
さあ、これからどうしようか?
主に、言葉にせずに尋ねてみる。
『この男は、敵か?』
『敵では無い。悪意も持っていない。』
返事に少し安心して、尋ねる。
「何故ここに来た?表に倒れているもう一人の男は誰だ?知り合いか?」
驚いた男は起き上がろうとしたが、まだ動けなかった。
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