第6話 嵐の後③

「主、小さくなって見えないようにしてくれるか?」


少しだけ不満そうだったが、従ってくれた。肩に乗ってもらったら、ほとんど重さを感じない。

これで、何かあっても、私が咄嗟に対応できなくても主が守ってくれるだろう。


母屋に戻ると、男はまた気を失っていた。息は安定していたので直ぐに動けるようになるだろう。


表に出て、倒れているもう一人の男を確認する。

身なりが良く、体つきも良い。傍らの剣と腰の袋を回収する。中身は金貨と薬らしき物だったが、何かがおかしい。

袋の奥に、まだ何かが有りそうだが私には取り出せなかった。


そういえば、助けた男の腰にも同じ様な袋が下げてあったな?何か細工があるのかもしれないな。


このまま始末しようと思っていたのだが、前にジイジとバアバに聞いたことがある高貴な方だったりしたら困るので状態保存を掛けて獣に食われたり朽ちたりしないようにしておく。

男が話せる様になったら、聞いてみよう。


助けた男の物らしき剣を拾うと、この剣からも何かが感じられる。

何というか、本来の持ち主以外が持つと抵抗されるような感覚が有った。

まあ、あの男に持たせたら私が危なくなるかも知れないからな。小屋裏の物置に仕舞って置こう。


他には役に立ちそうな物は落ちていなかった。


あと少しで雪が降る。

本当なら、冬に備えて薪や木の実や果実を集めなければならないのだが、暫くは遠出は出来ないだろう。


使ってしまった薬も、作らないとな。薬草集めからしなければならなかったのだが、冬までに同じだけ作れるかどうか?


万一、男が動けずに春まで此処に居る事になると、食料の蓄えは二人分には足りない。


出て行ってもらわないと。

強壮効果のある薬草でも探しておくか。

私には用はないが、近くの沢で少しなら採れるだろう。

ついでに、魚の罠だけ回収しておくか。

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