第5話 嵐の後②

昨日の汁の残りと焼き上げた木の実の菓子で簡単に朝飯を済ませた後、母屋の周りと中を確認する。

飛ばされて無くなったり壊れたものは無さそうだ。


前回の大雨の時に雨漏れしていた場所も、濡れてはいなかった。

簡単な補修だったが、直せたようだ。

祠の中に入れた物も無事だったようだ。


一安心して、母屋の裏手でジイジとバアバを呼んでみたものの、返事はなかった。

今までも時々こんな事は有ったのであまり心配はしないが、争ったらしい男が二人も居れば頼りたくなる。


さて、目覚めたらどうするか考えておかないと。


母屋の土間に戻ると、男は目を覚ましていた。

まだ話せない様子だったので、やかんの湯を木の器にあけて冷めるようにして傍らに置いた。


小屋に戻り、怪我が酷いときに使う薬を探す。

余り数を作れない薬なので、迷ったが持って母屋に戻る。


男は意識はあるが朦朧としていた。

試しに竹筒で作った水差しで白湯を飲ませてみたら、むせながらも飲み込めたので、白湯で薬を溶いて葛でとろみを付けてから飲ませた。

まだ飲みたそうだったので、薬草を混ぜた青汁を作りもう要らないと合図されるまて飲ませた。


これだけ飲めれば、明日には起き上がれるようになるだろう。


念のために、山の主を呼んでおくか。

指笛で合図を三回に分けて送ると、裏山から主が降りてきた。

嵐の中でも無事だったようだ。


「たのむ!しばらく傍に居てくれるか?」


唸り声を上げながら私の後に付いてくれる。

主との付き合いは長い。

怪我をして動けなくなっていたのを助けたのが始まりで、ジイジとバアバがまだ実体を持っていた頃の事だから。


「母屋に居る男が悪さをしたら、私をたすけてくれ。」


解ったと言うように、体を震わせて応える。

この辺りでは、主に勝てるのは私くらいだろうが頼りになる奴だ。


念の為、目潰しに使う灰を一掴み小袋に入れて懐へ。

小刀を腰に挿しておく。

人一人に遅れを取ることは無いと自信はあるが、得体のしれない男だ。

まだ仲間が居るかも知れないし。

用心しよう。

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