第4話 嵐の後

雨が止んだようだ。


相変わらず風は不気味な唸りを上げているが、少しずつ明るくなる空を走る雲に追いかけられるように収まりつつあった。


暗い内は聞こえていた人の声は、いつの間にか無くなっていた。

立ち去ったのだろうと思い、表を伺う。


人が、倒れていた。


此処で人を見るのは、何年ぶりだろうか?

ジイジとバアバがその存在を失ってからだから、五年ぶり位か?


どうしていいか分からなかったが、放っておくこともできず、そのずぶ濡れの男?に声を掛けてみた。


返事は、無かった。

遠目に見ても、まだ息は有るようだ。

関わり合いたくはなかったが、仕方なく近付き様子をうかがう。


傍らまで来ると、怪我をしているのが見えた。

切られでもしたのか、肩と背中、足から流血していた。


近くには剣が落ちている。

周りを見回すともう一人倒れていて、近づいて確認するとこちらの男は傷が深くもう息が無かった。


正直、巻き込まれたくないなと思ったが、助けても見捨ててももう同じだと思って息がある男を母屋の土間まで引きずっていった。


重かった。


傷口を確認すると、左足の傷が深く出血が続いていた。


急いで小屋に戻り、薬草から作った効きそうな薬を箱ごと掴んで運び土間に幾つか並べる。

血止めの中でも一番の効き目のものを取り出して足の傷口に押し込む。呻き声を上げる男を無視して掌を翳して直ぐに出血は止まったようだ。


背中と肩も同様に処置した。

使暫く動きたくなくなる程の疲労感が出る。

実際には疲れてなどいないのだが、そう感じるのだ。


他人に力を使ったのは初めてだったが、上手く行ったようだ。


囲炉裏に火を入れる。

暫くこちらは使ってなかったので、少しだけ手間が掛かった。


やかんに水を入れて囲炉裏に吊るす。

濡れたままでは良くないだろうとは思うが、この体格の良さそうな男に合いそうな着物はないし、勿論だが脱がせる気もない。


男を何とか火の傍まで引きずっていった。

後は、この男に生きる力が残っていれば助かるだろうと思って、小屋へ戻った。

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