第3話 嵐の夜に
「あっ、降ってきたか〜?」
表に干してあった着物や茸、軒先に干してあった魚を取り込み、空を見上げる。
先程から風が吹き始め、雲の流れも早くなる。
この場所は谷底から一段上がった平地なので、水が上がってきたり風で被害が出ることは滅多にないが、用心に越したことはない。
一旦雨が止んだのを確認し、食べかけの夕飯を急いで済ませて、鍋に残った汁を朝飯用に小鍋に移し蓋をして傍らに置く。
落ち着く間もなく、飛ばされそうなものは母屋と祠に仕舞い、大事な物は小屋に移した所で大雨になった。
干してあった魚を笊に広げて改めて塩を振る。
茸は汚れだけ落としてカゴに仕舞った。
灰の中で燻した木の実を取り出して灰を払い、そのままかじっても美味しくないものを選び出して皮を剥いで木椀に入れすりこぎですり潰し、味を調える為に栗の実を少しだけ加えた。
適当な大きさに千切って丸めてから平に伸ばして、囲炉裏に吊るした鍋に貼り付けて焼く。
香ばしく焼き上げたところで、鍋から剥がして少しだけ味見する。
もう少しだけ栗を多くしたい所だ。甘味が足りない。
今度栗だけを取りに、向こうの山まで足を伸ばそうかな?
残りも丸めて引き伸ばして鍋に貼り付けて焼いていく。
暗くなると、もう出来ることはないので早めに寝るだけだ。
重い物を運んだせいもあり、疲れ切った私は直ぐに眠りについた。
雨音に目を覚ますと、まだ外は暗かったものの小雨に変わり、風音も不気味な唸りはあるが収まってきていた。
少し安心して、布団を被り直してまどろんでいると、表から微かな声が聞こえてきた。
風音に紛れてはいるが、人の声のようだ。
他人の声を聞くのは、どれくらいぶりだろうか?
こんな時は、いつもジイジかバアバに尋ねるのだが、何故か今は近くには居ないようだ。
一人で身を守れるようになるまでは他人を受け入れてはいけないとジイジとバアバから常に言われていたから、こんな時に居ないと困るな……
暗闇に目を凝らしても、気配は感じるものの何も見えないんだけど?
声は、争っているようにも聞こえる。
例え助けを求める声だとしても明るくなるまでは何もできないので聞かないようにして、戸締りを確認して布団を被った。
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