第2話
「
バタバタと足音をさせて入ってきたのは、見慣れた顔の悪友・
「
「……はいはい。今日は誰の件?」
「
「あら、今度は
「
「それで了承したの?」
「……した」
「はぁぁ……」
この国では、一度後宮に入った妃は皇帝が代替わりするまで一歩も外に出られないことになっていた。この男は何百年も続いたその伝統を、即位するや否や一瞬で変えてしまったのだ。
「皇帝のお手付きになっていなければ後宮を出ても良い、なんて決まりを貴方が作るからよ!」
「何を言うんだ、翠蘭。いくら相手が皇帝とは言え、好いてもない男の妻になるのは可哀そうだと思わないのか?」
「そ、それはそうだけど……。でもそう言う問題? 貴方はこの国の皇帝よ。必要でしょ、跡継ぎが!」
細くて小さくて頼りなかった昔の
「まあ、故郷に想い人がいると言うなら、確かに
「だろう? それに俺だって、心から俺のことを好いて大切にしてくれる女人を妻にしたい」
「……それもそうよね。貴方の気持ちも分かる」
夕餉の毒見をして
「俺のことは、可哀そうだと思わないのか?」
「貴方のこと?」
(まあ……次々に色んな妃にフラれて可哀そうと言えば可哀そうだけど)
この男は一体何が言いたいのだろう。
可哀そうなのはこっちの方だ。
十二歳で嫁いで誰よりも長い時間を一緒に過ごしたのに、私にだけは
いっそのこと、私も後宮を出たいと伝えてみようか。
私だって皇帝の手なんて一度だって付いていない。
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