49 終

 子供のときのことなら、いざ知らず、二十歳を超えた妹の裸身を始めて見る。正直言えば美しいが、どこか哀れも感じさせる。ぼくが鈴木尚子と結婚せず、また他の誰とも性的関係が持てなかったとき、ぼくに与えられたはずの肉体。そう思うと、つい萎えてしまう。が、男の身体とは現金なものでそうならない。既に硬く膨れ上がっている。

 ぼくの手の動きにされるがままの妹だ。一枚ずつ丁寧に衣服を剥ぐ。腹が透け、胸が透け、やがて裸身が現れる。思ったよりも厚みがある。もっとガリガリだと思っていたのに……。

「綺麗だよ」

「お兄さまも」

「唯、愛している」

「わたしもです」

 妹の言葉に嘘はない。 それはわかるが、穢れが見える。妹がぼくに除いて欲しいのが、その穢れ。が、どうすれば良いか。妹を貫き、逝かせ、同時に自分も果てれば、それが成されるとも思えない。二度目がない行為だというのに……。

 妹の口から二度目がないとは言われていない。が、成功しても、失敗しても、妹はぼくの妹に戻るだろう。おそらく、その覚悟だ。唯はぼくが唯を愛する以上にぼくのことを愛している。今なら唯にもわかると思うが、母はそれを見抜いている。だから唯に性奴隷を命じたのだ。ぼくには方法がわからないが、唯は避妊のエキスパートでもあるだろう。そうでなければ兄の性奴隷など出来やしない。この世で面倒なのは穢れた血の繋がりなのだ。

「唯も自分から動いてくれ」

「いやです」

「では言い方を変えよう。ぼくの動きについてきてくれ」

「はい」

 言ってはみたが、ぼくは自分で放心する。が、それも僅かな間で唯の唇を奪う。これまで知らない小さな唇だ。瞬時、自分の性器をそれに咥えさせたい欲望に駆られる。が、それでは本当に性奴隷だ。フェラチオをするにしても順序がある。それで自分の唇を唯のそれに合わせる。唯は唇を開かない。それを強引に押し開き、舌を入れる。最初は浅く、次いで唯の舌を探しつつ。後は絡め、左右に遊ばせる。その間、ぼくの手も休んでいない。唯を抱っこするような形で始めたから胸も尻も十分に味わえる。胸を揉み、脇腹を撫ぜる。唯が震える。似たような行為を何度か繰り返せば唯が汗ばんでくる。汗には官能のエキスが混じる。ゆっくりとキスを終え、舌の冒険を始める。適度な大きさの胸の下を舐めると唯が震える。こんなところに性感帯があったのか。軽い驚きに包まれつつ腹から臍周り、秘所の近く、脚に降り、爪先まで巡ると所々でビクンと反応。秘所に手を遣ると既に熱く滾る。随分早いと思うが、時計を見ると既に三十分近く経過している。ぼく自身が唯の術中に嵌っていたようだ。

「唯、愛しているよ」

 今夜以降、冗談以外で言ってはならない禁断の言葉をぼくは口にする。

「わたしも愛しています、お兄さま」

「ああ、唯……」

「ああ、お兄さま……」

 流れるのは幻想のような時間だが、感じるのは現実の快楽。舌を駆使し、唯を天に昇らせる。ぼく自身の体力は二ラウンド持たない。だから唯と一緒に果てるまで唯を何度でも逝かせたいのだ。

「ああ、ああ、ああ……」

 唯が数回腰を震わせる。男のぼくに今一つ波の大きさが掴めないが、小さなものではないだろう。唯の身体がくにゃくにゃになる。ぼくもそろそろ疲れてくる。多少の息抜きはあるものの始めてから怒張を続ける自分のモノが放出欲に駆られている。そろそろ我慢も限界だ。前段階としてトロントした目の唯にフェラチオさせ、大きさを万全とすると、

「唯、一つになるよ」

「はい、お兄さま」

 このときばかりは唯もぼくに協力し、ぼくの性器が唯に収まる。完全にぴったりとはいかないが、初めてという感じもしない。まるで昔から知っていたような不思議な感覚。

 だから自然と抜き差しが行われる。リズムは最初から幾分早い。唯が感じやすくなっているためと、ぼくの気持ちが焦って来たから……。

 体位はよくある正常位だ。それに至るすべての体位も、さほど異常なものは含まれない。ピストン運動も在り来たり。が、何かが違う。普通だが普通と違う何かがある。それを愛と呼ぶ気はぼくにはないが、たぶん似たような感情だろう。

「唯、そろそろだ」

「お兄さま、わたしもよ」

「行くよ」

「ええ……」

「あああああ……」

「ひゃあああ……」

 脊椎が毀れるほどの快感がぼくの性器から全身に駆け巡る。唯の骨盤の震えも尋常ではない。ビリビリとした揺れがぼくにも伝わる。ついであろうことか、ぼくに二度目の快楽が……。性器が破けるような快感とともに一度目にも増し、大量の白濁液が……。ぼくの骨盤も唯に劣らずビリビリと震え、それがまた唯に伝わり、繰り返され……。

 やがて……。

「終わったな」

「終わりました」

 快楽の波が退き、ぼくと唯が言葉を交わす。

「素晴らしかったよ」

「わたしもです」

「もう二度度できないと思うと寂しいな」

「わたしはお兄さまの妹です」

「そうだな。これからは、それで満足しよう」

「でも記念日にならば……」

「唯……」

「いえ、冗談です」

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