8 合

 ああ、ああ、ああ……。

 母の喘ぎ声が聞こえてくる。

 もちろん無言の声として……。

 おお、おお、おお……。

 母の汗のうねりも聞こえてくる。ぼく自身の汗と混じり合った快感の声として……。

 すでに一時間近く、ぼくは母の身体を愛撫し続けている。母の身体を通じ、女性の神秘を探っている。その素晴らしさは性体験が初めてのぼくには強烈過ぎる。だから、まだ探り足りないとわかっていても、どこかで線を引く必要があると感じてしまう。

 悲しいことに、ぼくも母も少し疲れ始めている。自分の疲れは実感だが、母の疲れも感じ取れる。けれども、ぼくはまだ性を放っていない。放つ試みもさえもしていない。

「疲れてきたので今日はここまで……」

 そう母に告げることは可能だろう。が、母が次にぼくの相手をしてくれるかどうか。実の息子であるぼくの目の前に裸体を曝し、まったく動じない母。セックスについて、ぼくに自信をつけさせるため、というのが母の理由だとしても……。母は笑顔で上機嫌。まるで臆するところがないように見える。が、母も一人の女性なのだ。当然、羞恥心はあるだろう。世間一般の親子以上に気心の知れた母とぼく。そうでなければ無言の会話などできるわけがない。けれども、その無言の会話こそ、母の羞恥の表れだとしたら……。ぼくにセックスを教えることに躊躇はないにせよ、母は自分の『母』という在り方に女性が混じってしまう事実をどう捉えているか。母の身体を存分に味わった後だから、ぼくはそれが気にかかる。いや、漸く気にかけることができたというか。

 ……とすれば、母の親切過ぎる試みに、ぼくは応える必要がある。下手でも構わないから母を気遣い、今宵のセックスを終えるのだ。

(お母さん、入れるよ)

 決意も新たに、ぼくが母に無言で告げる。

(ええ……)

 母がそれを、やはり無言で受け入れる。そうと決まれば愛撫を再開。母のヴァギナ付近が熱を持ち、柔らかく変化しているのはわかっている。あとは、その口を開くまでだ。そう決心し、ぼくが舌先で母のヴァギナを責め立てる。すると忽ち、愛液が溢れる。母は、ぼくとの結合を待っていてくれたのだろうか。それとも自然な成り行きなのか。舌を震わせながら、ぼくが母を責める。母も、ぼくの攻めに身体を蠢かす。そこにいるのは母であり、非母。家族であり、非家族。ぼくの愛する対象。ぼくの愛する女性。

 もしかしたら、この世で唯一人の……。

 そんなことを脳裡に思い浮かべつつ、一旦自分の顔を母のヴァギナから離し、指先で挿入位置を確認しながら右手でペニスを触る。母の愛撫に気を取られていたので、ぼくのペニスは長い間、半勃ち状態。が、すぐにそれが硬さを取り戻す。長さも増し、父譲りの素敵な姿となる。母が両脚を大きく開き、ぼくの挿入を後押しする。ついで、ぼくが生まれて初めて女性の体内に入っていく。最初は少し抵抗があるが、押せば、にゅるりと奥に入る。ぼくのペニスが母のヴァギナにすっぽりと収まる。

 ……と、そのときにはもうピストン運動が始まっている。母とぼく、どちらからででもなく、完全に同期して……。

 ぼくが突き、母が腰を上げる。ぼくが引き、母が腰を戻す。最初のうちは慣れないから、ぼくのペニスがスポンと抜けてしまう。が、数度の繰り返しでタイミングが合う。パーフェクト・タイミングだ。徐々に快感が高まっていく。母とぼくに体力的な余裕があれば他の体位も試せただろう。押し寄せる快感の中で、ぼくが思う。が、諦める。次は、ないかもしれないのだ。いや、きっと次はないだろう。ぼくにマスターベーションを教え、それが終われば一言の暗示でぼくにその行為を忘れさせた母だ。母にその気があれば興味がてらに何度かぼくのマスターベーションを手伝ったはず。が、ぼくが十九歳になるこの日まで、母はその行為を繰り返ししていない。だから、ぼくには次の母とのセックスはない、と思えるのだ。

 ……とすれば、ぼくにも当然のように母にも生涯忘れなれないセックスを今宵果たすしかないのだ。

 もしかして、それが実現できれば母がまたぼくとセックスをしてくれるかもしれないと、あのときぼくが思ったかどうか。

 ぼくの身体の中を過去から今宵までの想いが一気に吹き抜け、自分では既に限界を超えた大きさにまで膨らんだペニスが激しく脈動する。母のヴァギナの不思議な心地良さに、ぼくのペニスが悲鳴を上げる。ああ、もう、ああ……。ぼくが心でそう叫んだとき、母の身体が大きく弓なりに反る。母の骨盤付近がブルブルと震える。その動きが最後の刺激となり、ぼくのペニスが大きく爆発。ああ、ああ、ああ……。母の身体の奥深くまで、ぼくの精が放たれる。

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