第24話
「なんで入学式の日なの……?」
あたしとリンちゃんは1年生の頃から同じクラスだったけれど、千鶴や有紀たちは別のクラスだった。
リンちゃんはクラス内でも人気者で、イジメの対象になるようなこともなかった。
でも、その時の事を《リプレイ》させられるということは、何かリンちゃんの死に関係する事が起こっていたからなんだろう。
そんなにも、前から……。
「あたし、入学式の日にリンちゃんに初めて話しかけたの。すごく綺麗な子だなって思って」
あたしは入学式の日を思い出しながらそう言った。
「ごめん、奏」
「え?」
続の言葉にあたしはキョトンとする。
「入学式の日に奏に話しかけられたのは……俺だ」
「なに……言ってるの?」
あたしが話しかけたのは間違いなくリンちゃんだ。
男子と女子を間違えたりなんかしない。
「リンは、俺の双子の妹なんだ」
続が、少し顔をゆがめ、しかしほほ笑んでそう言った。
一瞬あたしの時間が止まった。
リンちゃんが続の双子の妹……?
そう聞いて、自然とリンちゃんと続を重ねていた。
目の大きさ鼻の高さ、輪郭。
違うように見えて、どれも少しずつ似ているような気がする。
慎重も、リンちゃんと続は数センチしか差がないから同じ服を着て後ろから見たらどっちがどっちかわからないかもしれない。
でも……。
「なに言ってるの。続とリンちゃんは苗字が違うでしょ」
あたしはそう言った。
続の苗字は富坂。
リンちゃんの苗字は鈴音だ。
「両親が離婚して俺は父親、リンは母親に引き取られたんだ」
「なに……言ってるの……?」
「入学式の日、リンは体調不良で休んだんだ。
元々体が強い方ではないし、一旦出遅れたら学校生活になじみにくいと思って、俺がリンのフリをして登校した」
淡々と語る続にあたしは付いていくので精いっぱいだった。
あの日あたしは離しかけた相手は続だった?
まさか、そんな事……。
「でも、奏に話しかけられて思ったんだ。あぁ、この子と同じクラスならリンの事は心配ないなって」
「ちょ……ちょっと待ってよ。急にそんな事言われてもわかんないよ! それに、入学式初日に休んだら学校に馴染みにくくなるのは続も同じでしょ!?」
「俺はいいんだ。勉強ができるわけでもないし、適当に高校生活を送るだけなんだから。でも、リンは違う。リンには大きな期待と将来があった」
「そんな……」
「今まで騙しててごめん、奏」
続が辛そうな笑顔を浮かべてあたしを見る。
でも、あたしは何も言えなかった。
リンちゃんや続の事を知ってるようで、実は何も知らなかった。
そんな自分にショクを受けていたのだった……。
☆☆☆
そして、《リプレイ》が始まった。
教室の机はすべて後方へと移動され、中央には椅子だけが残っている。
入学式の詳しい内容は覚えていないけれど、ずっと椅子に座っていただけだからなんの問題もなかった。
続きはあたしが座った場所から一列隔てて座り、真っ直ぐ前を向いている。
これなら2人とも《リプレイ》を間違える事はない。
でも……もしも2人とも《リプレイ》に成功したらどっちも死なずに済むんだろうか?
それとも、2人とも死ぬまで《リプレイ》を続けさせられるんだろうか……?
窓の外はもう真っ暗になっていて、星が手の届きそうな場所に見えた。
続と2人でいるのに、全然ロマンチックじゃない。
星の輝きはただ切なさを加速させるだけで、あたしは窓の外から視線を逸らした。
そして、椅子に座っているだけで《リプレイ》は終わった。
《それではこれより、正確性を採点します》
そんな声をぼんやりと聞く。
「なぁ奏」
続が前を向いたままであたしを呼んだ。
「なに?」
「俺、お前の事好きだったよ」
その言葉に心臓がドクンッと跳ねた。
こんな状況だけど、自分の頬が赤くなるのがわかった……。
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