第15話
それからしばらくの間あたしたち3人の間に会話はなかった。
千鶴が次の《リプレイ》でちゃんと間違えるかどうかはわからない。
脅しのような言葉を言ってみても結局は千鶴次第なんだ。
続は本当に千鶴が犯人だと思っているのだろうか?
次で確実に2人で生き残る手段として、千鶴を追い詰めただけだろうか?
続の顔を見てもそれはわからず、あたしは椅子に座ってうなだれた。
犯人は疑心暗鬼になっていくあたしたちを見てどう思っているんだろう。
きっとどこからか笑いながら見ているんだろうな。
3人も死んだのにまだ解放されないと言う事は、次の《リプレイ》も確実にあるだろう。
「奏」
続に呼ばれてあたしは振り向いた。
「なに?」
「犯人はどうやって殺しているんだと思う?」
そう聞かれて、あたしは眉間に眉を寄せた。
それが一番わからない所だ。
犯人の姿は見ていないし、直接手を下してもいない。
だけど確実に《リプレイ》最下位の人間をあぶり出し、殺している。
「あの×印は、ミスをしたって意味なんじゃないかと思うんだ」
「ミスって、《リプレイ》をミスしたって事?」
「あぁ。でも、あのマークは一体どうやって浮かび上がってるんだ?」
「わからない……」
あたしは左右に首を振った。
殺害方法がわかれば、回避する方法もわかるかもしれない。
続はそう考えているのかもしれない。
「ねぇ続、いくらなんでも高校生が考えられるような事じゃないよ」
あたしは千鶴に聞こえないようにそう言った。
千鶴があたしたちを邪魔に思う理由もいまいちわからない。
ただ2年A組に詳しいお金持ちというだけじゃ、千鶴が犯人だとは思えない。
「わかってる」
続は顔色1つ変えずに頷いた。
ということは、やっぱり続は次の《リプレイ》で千鶴を犠牲にするために追い詰めていたんだ。
あまりいい気分はしなかったが、あたしはそれ以上聞く事をやめた。
『じゃぁ千鶴の代わりに犠牲になれるのか?』
そう聞かれるとあたしは首を縦にふることができないから。
続もその話題に触れたくないからか、すぐに話を戻した。
「ここへ連れてこられたときの事を、何か思い出せないか?」
「なにも……学校から帰ってた所までは覚えてるけど、その後目が覚めたらここにいた」
あたしはもう1度記憶をたどりながらそう言った。
「突然記憶がなくなるってことは、相手はなにか薬品を使用して俺たちを眠らせたり気絶させたりしてここまで運んだんだろうな」
「うん。たぶんそれが正しいと思う」
目が覚めた時に少しだけ頭が痛かったりメマイを感じたりしていたから、それは薬品の副作用なのだろう。
「人間を運んだってことは、車を所有している人物だ」
「うん」
あたしはまた頷いた。
「仮に5人同時に誘拐したとすれば、中が見えないようになっている大きな車が必要になる。そういう車にのっている先生はいなかったっけ?」
「先生!?」
あたしは思わず大きな声をあげてしまった。
まさか先生を疑っているとは思っていなかった。
「クラスの事を一番よく知っているのは担任の山田。だけど、山田の車は小さい軽自動車だったはずだ。でも、家に他の車を持っている可能性もある」
続の言葉にあたしは担任の山田先生を思い出していた。
小柄な女性で、人を1人運ぶ力があるとは思えない。
「例えば、山田に仲間がいたとしたら?」
「……先生でも生徒を運ぶことができるかもしれないけど……でも、理由が全然わからない」
山田先生は生徒から人気で、授業もとても上手だ。
年齢が若いから友達感覚で相談もできるし、たすけてもらっている生徒は多い様子だった。
そんな先生がこんな恐ろしい部屋を作るなんて思えない。
「首謀者はきっと別にいる。
だけどここまで2年A組の教室を忠実に再現しているということは、山田も一枚かんでいると思っておいた方がいいかもしれない」
続の言葉にあたしの中の山田先生のイメージが崩れていくのがわかる。
こんな状況だからか、続の言っていることはすべて正しいような気もしてしまう。
続の憶測を鵜呑みにするのはよくないが、続についていけば生き残れるという気持ちから信じてしまう自分がいる。
「……犯人は誰にしろ、ここから出なきゃね……」
あたしは自分に言い聞かせるように、そう言ったのだった。
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