第14話

そして数分後。



信一の死体が真の横に並んでいた。



千鶴は一切手を触れようとしなかったので、あたしと続が移動させたのだ。



次の《リプレイ》に支障がでるかもしれないため、教室の中央に放置しておくことはできないから。



あたしは有紀や真や信一の血でぬれた自分の手を見つめた。



3人分の血が入り混じった教室内で、あたしは千鶴を見た。



千鶴の涙はもう消えていて、窓の外をぼーっと見つめている。



あたしは大股に歩いて千鶴へと近づいた。



「千鶴。あんた何したの?」



そう聞く自分の声が怒りで震えていて、自分でも驚いた。



誰かに対して憶測だけでここまで怒った事は生まれてはじめてだ。



「え?」



千鶴が首を傾げてあたしを見る。



千鶴の顔はメークがすべて落ちてしまっているが、それでもやっぱり可愛らしかった。



可愛いのは罪じゃないが、その容姿を駆使して信一と真を思うように扱っていたことは許されない。



「この《リプレイ》あんたに関係した事でしょ」



そう言うと、千鶴は見る見るうちに目を大きく見開いていった。



「おい、それって同う事だよ」



続があたしの後ろにやってきて、そう聞いてきた。



あたしはさっき考えたことを2人に聞かせた。



今までの《リプレイ》の共通点は千鶴にある可能性が高いと言う事を。



「そんな……! たったそれだけの事であたしを疑ってるの!?」



千鶴が叫び、そして続を見た。



自分を好きな2人が死んでしまったから、今度は続を味方に付けようとしているのがバレバレだ。



「いや、俺は最初からお前が怪しいと思ってたよ」



続の言葉に千鶴が愕然としたように言葉を失った。



「こんな部屋を用意できる人間なんてそういない。金持ちでクラスの事をよく知っている人間じゃないと無理だ。



でも、ここに連れてこられた中でお前だけは……その条件に当てはまってた」



「待って……ちょっと待ってよ!!」



千鶴が叫ぶ。



「あたしが自分でこの部屋を用意して、自分で誘拐されてきたっていうの!? そんな事、あるはずないでしょ!」



「いや……何らかの理由で俺たち5人が邪魔になったんだと考えれば、それも頷けるんだ。



お前は誘拐されたように演技をしていただけなんじゃないか?」



続の言葉に千鶴は数歩後ずさりをした。



その表情は青ざめている。



「邪魔なんか、思ってない!」



「自分の潔白を示したいなら、次の《リプレイ》でわざと間違えろ」



「なっ……!?」



「お前が犯人なら《リプレイ》の採点で最下位になっても×印はつかず、別の誰かにつくはずだ。お前が犯人じゃなければお前は死ぬ」



続が冷たい口調でそう言い、千鶴は左右に激しく首を振った。



「いや……いやだ!! 死にたくない!!」



「2人も死なせといてそんな事をよく言うな!!」



続が近くにあった机をなぎ倒して怒鳴った。



机が横倒しに倒れ、激しい音を立てる。



千鶴はそれに驚き、言葉を失った。



「今度はお前が身をもって《リプレイ》する番だ。そうだろ?」



続は自分の味方にはなってくれない。



それがわかった千鶴はずるずるとその場に座り込んでしまったのだった。

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