第2話
さっきはドアや窓や開かない事で頭がいっぱいで、ちゃんと景色を見ていなかった。
「どういう事だよ……」
続が奥歯をかみしめる。
ここは大きな建物の一室か、または小高い丘の上に立っている建物だということがわかった。
どちらにしても、この高さだとあたしたちの姿が外から見えることはないだろう。
声を出しても、届く距離じゃない事は明白だった。
「ねぇ、ここどこよ!? なんで閉じ込められてるの!?」
千鶴が悲鳴に近い声を上げる。
「そんな事こっちにだってわからないわよ!!」
有紀が声を荒げて千鶴にそう言った。
なにもわからない状況だから、イラついているのがわかる。
もっと冷静にならないといけない。
あたしはそう思い、深呼吸をした。
「奏」
続に声をかけられて、あたしは視線をうつす。
続はジッと窓の外を見ている。
「なに?」
「この景色に見覚えはないか?」
そう聞かれて、あたしはもう一度窓の外を見下ろした。
何度見てもどれも見覚えのない建物ばかりだ。
「ないよ」
あたしは左右に首をふってそう返事をした。
「ここまで高い位置からじゃ、街並みも随分変わってみえるはずだ。家からそんなに離れていない場所かもしれない」
「どうしてそんな事がわかるの?」
そう聞くと、続はスマホを取り出してあたしに見せて来た。
続のスマホも電波はゼロだ。
「時間を見てくれ。今夕方の6時半だ。学校が終わったのは4時過ぎ。
俺たち全員をなんらかの方法でここへ連れてきて監禁するまでの時間を考えたら、移動距離は大したことないはずなんだ」
続の言葉にあたしは目を見開いた。
「すごい……」
言われてみれば確かにそうだ。
こんな事をした犯人が複数犯だったとしても、6人全員を連れてくるには時間がかかるはずだ。
女子生徒だけならともかく、体格のいい男子生徒までいるわけだし。
そうなると、ここは県内という可能性がとても高い。
「それにこの部屋。2年A組そっくりに作られている」
「うん。起きた時は教室だと思ったよ」
「集められているのも全員が2年A組の生徒。と言う事は、犯人は2年A組を知っているヤツだ」
あたしは続の言葉に頷いた。
「その中でこんな大掛かりなものを用意できる人間なんて、限られていると思わないか?」
「そうだね。教室をまるまる1つ再現するなんて、普通じゃできない」
あたしがそう言うと、続があたしの耳に顔を近づけて来た。
「これが本物の監禁なら、俺は辰宮千鶴が怪しいと思う」
そっと言われたその言葉にあたしは一瞬目を見開いた。
でも、学校1のお金持ちならこのくらいの部屋簡単に用意できるような気もする。
でも、千鶴がそんなことをする理由は全くわからない。
「とにかく、もう少し様子を見ているしかなさそうだね」
あたしはそう言い、窓の外を見つめたのだった。
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