第5話妹
さゆりを駅まで送り、自分の部屋の前まで帰って来た亮は、隣りの部屋から調理の音と、いい薫りが漂って来るのに気付いた。
『飯か・・・、昨日の慶子さんの料理、美味しかったなあ』
そんな事を思いながら、部屋の中に入った。
ベッドに横になると、程なく、チャイムが鳴った。
『はい』
玄関を開ける。慶子だ。
『戻った?』
『はい、妹さん、駅まで送って来ました。』
『ありがとう。』
『いいえ』
『お夕食は?』
『ああ、これからですけど、』
『ああそう。よかったら、作ったの持ってくるから食べて』
『えっ、いいんですか?』
『うん、さゆり送ってもらったし』
『ありがとうございます』
『じゃあ、持ってくるから、待ってて』
『はい』
そう言うと慶子は自室に戻って行った。
(ラッキー!)
心の中で、そう思うと間もなくドアをノックする音。
『どうぞ』
『ごめんなさい、亮さん、扉開けて』
開けるとそこには、てんこ盛り料理が載ったお盆を持っている。
『お待ちどう様、入っていい?』
『あっ!受け取りますよ。』
『大丈夫、このまま置かせて、テーブル有る?』
『じゃあ、そこの上に』
『はい。お邪魔します』
美味しそうな湯気と薫りが漂ってる。
『こんなにたくさん、いいんですか?』
『いいのよ、食べられる?』
『どうかなあ?』
『じゃあ、私も一緒に食べていい?』
『えっ?ここで?』
『うん』
『でも、信二さんは?』
『お風呂入ってる、あの人の分は部屋に置いてある』
『いや、僕は別に構いませんけど』
『よかった、信二さんにも、言ってあるから』
『えっ?』
『亮さんちで一緒に食べてくるって』
『はあ・・・』
『じゃあ、食べましょう』
『・・・はい』
亮は慶子と二人で食事を始めると、
『おいしいです』
『ありがとう』
『2日続けて、こんなに美味しい食事を』
『うふふ、ありがと』
『信二さんが、羨ましいです、本当に』
『あの人、このくらいの料理を、一人で食べちゃうのよ』
『ハハ、そうですね、昨日の食べ呑みっぷりみてたら分かります』
『フフ』
『こんなに美味しいなら、いっばい食べちゃいますって』
慶子は軽く首を振り
『ううん、あの人が大きいのは、昔からなの』
『えっ?』
『最初に会った時から、大きかったわ』
『へえ〜、そうなんですか』
『産まれた時から大きかったらしいわ、あの人のお義父さんが言ってた』
『へえ〜』
『ところで、さゆり、何か言ってた?』
慶子は急に話しを変えてきた。
亮は箸を止め、改札でさゆりに耳元で囁かれた事を思い出した。
『・・・・・』
『何て?』
『・・・・・』
『言われたでしょ、好きだとか』
『いいえ!そこまでは!』
『やっぱり』
『明日会えるのがうれしい。っていわれました。』
『・・・そう』
『・・・・・』
『亮さんは?』
『えっ?』
『亮さんはあの子に会うの、どう?』
『・・・・・』
『うれしくない?』
『・・・いやな気は・・・しないです・・・』
『ふ〜ん』
こうした時の慶子はさゆりと同じような表情をしている。
『あの子ね、一途なの』
『・・・はあ・・』
『好きになると、本当に好きなのよ』
『・・・・・』
『亮さんは嫌い?あの子の事』
『・・・・・好きとか、嫌いとか、まだ昨日会ったばかりだし・・・』
『そう』
『・・・妹さんって、本当に俺の事・・・・好きなんですかね?』
『あら?何で?』
『どこが?』
『さあ?』
『・・・・・・』
『なんでかな?』
『・・・・・・』
『昨日のお夕食の時も、ずっ〜と貴方の事、見てたのよ。』
『えっ?』
『男二人で盛り上がってるのを、じ〜〜っと貴方の事、見てたわよ、喋舌らずに』
『・・・・・俺と信二さんで、盛り上がってました、確かに』
『気付かなかったんだ?』
『・・・・はい』
『まっ、私もあの人の楽しそうな顔を眺めてたんだけどね』
『・・・・・・』
『ん?』
『・・・でも、よりによって俺の事をなんで?』
『あら?私も好きよ!』
『!』
『迷惑?』
『いえ、うれしいです!』
『・・・・私には、ハッキリ言うのね?』
『あ、いや、・・・・どこがですか?』
『・・・う〜ん、まだよくわかんない。』
『・・・・そうですか・・・』
『とにかく、これからもよろしくね』
『えっ?あっ、はい』
『いろいろと』
『あっ、はい、こちらこそ』
『じゃあ、帰るね。』
『あっ、ごちそうさまでした』
『うん、じゃあね』
慶子が帰ったあと、亮はふと、さゆりの事を考えてた。
(俺の事好き?なのかな?本当に)
昨日と今日の出来事を振り返る。
(確かに、悪い気はしなかったよな)
それに、さっきの慶子の言葉
(慶子さんも俺の事好きって。信二さんいるのに。ちょっと種類が違うのかな?)
天井を見上げて考える。
(ケーキも好きだし、あんこも好きみたいなモンか?)
亮、ふと、そんなふうに考えた。
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