第20話 必然

 テントの中で眠る時は、四人で雑魚寝だった。背の低いヤチヨとコルを真ん中にして、侑子とヤヒコが両端に横になる。


 メムのテントは大きなものだったので、窮屈さは感じなかったが、隣で眠るヤチヨは非常に寝相が悪かった。侑子は端へ端へと追いやられ、夜半にテントの支柱に当たって目が覚めることが、度々あった。


「ヤチヨちゃん、お腹は冷やさないほうがいいよ」


 豪快にはだけた腹部を直してやるが、ヤチヨが起きる気配はなかった。上掛けを掛け直して、侑子も再び眠ろうと横になったが、今夜は目が冴えてしまったのか、なかなか寝付けなかった。


 明日も長い距離を歩くのだから、休まなければいけない。


せめて身体を横たえているべきだと分かっていたが、侑子はテントの外に滑り出ていた。


「本当にすごいなあ」


 周りに灯り一つない、山の夜。

頭上には、満天の星空が広がっている。

乳液を零したような天の川がくっきりと見え、大小様々な星々が、瞬いているのが目視できた。

この夜の月は、やや薄くなり始めた半月だった。


再び並行世界に来てから、賑やかな星空は毎夜のように見てきた。

まだ一度も、王都どころか、ヒノクニの市街地に足を踏み入れていないのだ。


 ユウキからの手紙に、巡業中の車中泊で見る夜空について、書かれたものがあった。


――きっとこんな夜空を、ユウキちゃんも見ていたんだろうな


 その時ユウキが見ていた空と、同じ世界の星空を見上げているのだ。

その事実だけで、侑子は愛しい人との共通項を見いだせたと、胸を震わすことができる。


 月の舟の和歌が頭に浮かんで、侑子は小声でその古の歌を唱えた。

精霊は、幸せを運んできてくれるだろうか。

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