パーティの計画②

「これ、ありがとう」


 ずっしりと重たくなった紙袋を、裕貴の机の上に慎重に置いた。


 席の主は侑子の方へ身体を向けると、期待に満ちた瞳で彼女を見上げてきた。


「どうだった?」


「とっても良かった」


 そんな感想しか受付けない気満々の表情である。きっと裕貴本人には自覚はないだろうが、だったとしても侑子は素直な感想で彼を喜ばせる自信があった。


「いつも貸してくれてありがとう。よろしく伝えておいてね」


「うん。伝えておくけど、礼なんて言わなくても次もどんどん来るよきっと。若者に自分の好きな音楽聴かせるの、生きがいみたいなもんだからさ。こっちこそありがとな、いつも付き合ってくれて」


 軽音同好会に所属してからというもの、侑子は裕貴――正確には彼の祖父母から数々の国内外ミュージシャンのCDを借りることが習慣になっていた。

 

 裕貴の祖父母は若い頃からの音楽好きで、自宅には彼らが長年買い集めてきた大量のレコードやCDで溢れているのだという。

 彼がギターに興味を示したのも、そんな家族の影響なのだそうだ。


「ちなみに……今回どれがよかった?」


 紙袋の中には十枚のCDが入っており、それらは裕貴と祖父の二人で選んだものだった。侑子にどのミュージシャンのどのCDを貸し出すのか、選定作業はいつも白熱するのだという。


「どれも良かったよ。一番印象に残ったのはプリンス、あとこのホワイト・ストライプスってバンドもカッコよかったな。二人組なんだね。ギターとドラムだけって珍しいなって思った」


 侑子は紙袋の中から二枚を取り出した。目を閉じた男性がマイクを構えているジャケットと、赤と白二色のコントラストが印象的なジャケットが机の上に並んだ。


「やった! それ俺のイチオシだったんだ。カッコいいよな、ホワイト・ストライプス。結構前に解散しちゃったけど。プリンスはじーちゃんが大好きだから、きっと喜ぶよ。どんどんゴリ押ししてくると思う――今年亡くなったんだ。すごくガッカリしてた」


「そうなの」


 息を呑んだ侑子のその言葉は、始業開始を伝えるチャイムに重なった。

 席へ戻ってくる生徒達の足音と、椅子の足が床を擦る音で騒がしくなる。


「あとでゆっくり話そう」


 机の脇に紙袋を引っ掛けた裕貴は、隣の席に着いた侑子に笑いかけた。

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