第13話 世界ⅰパーティの計画

 封筒の口を下にすると、数枚のキラキラ光るものが侑子の手のひらに落ちてきた。


 一つ一つ微妙に色合いの異なる青っぽいそれは、彼女にとって馴染みの物。


「いち、に、さん、し、ご……」


 今回は五枚。

硝子の鱗が同封されていた。


 ユウキが手紙の中に鱗を入れるようになったのは、二人がこの奇妙な文通の仕組みとルールを探っている時だった。


 便箋以外の物を入れても相手に届くのか――結果としては、先程読んだユウキからの手紙に書いてあった通りである。

 写真やこの鱗のように、厚みがあまりなく、封筒の封が閉じられるものであれば大丈夫なようだ。


「私もユウキちゃんの声が聞きたいよ」


 広げたままの便箋に向かって、侑子は呟いた。


応える者はなく、窓の外を往来する車の音だけが耳に入ってくる。


 机の上に出しっぱなしにしてある、銀色の箱の蓋を開けた。

数年前のバレンタインデーに、愛佳からもらったチョコレートの空き容器だった。数十枚の硝子の鱗で、既に底は見えなくなっている。


 侑子は手の中で輝く五枚の鱗を、その中に加えた。


――いっぱいになったら、次は透明な瓶の中に貯めてみよう


 瓶ごと光りに翳したら、きっとたまらなく美しいはずだ。

 

 満杯にせず、少しだけ余裕を持たせて蓋を閉めて、そっと振ってみたい。

 

 瓶に水を入れたら、スノードームのようなるだろうか。

 水の中で煌めきながら、踊るように硝子の鱗が揺らめくのだ。


色々な光りに翳してみよう。

窓の外の夕日、街中のイルミネーション、朝日を浴びて煌めく川面。


 このペースなら、あっという間に次の容器もいっぱいになるのだろう。


 ユウキも侑子も、二人共かなりの筆まめであった。

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